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歌声にのった少年のakrutmのレビュー・感想・評価

歌声にのった少年(2015年製作の映画)
3.8
アラブの人気オーディション番組「アラブ・アイドル」で優勝したパレスチナ・ガザ地区出身の歌手ムハンマド・アッサーフを、彼の実話を元にフィクションとして描いた、ハニ・アブ・アサド監督の音楽ドラマ映画。パレスチナが舞台であるがメッセージ性はほとんどなく、パレスチナ情勢などの知識に関係なく、楽しめる(そして感動できる)良作である。映画全編を通じて流れるアラブ音楽も心地よい。

映画としての娯楽性のために、姉ヌールにまつわるプロットや青年になったムハンマドがパレスチナを出国する際のストーリーなどは完全にフィクションであると思うが、後半の「アラブ・アイドル」での観客やパブリックビューイングで熱中するガザの人々の映像は、本物である。それを見ると、ムハンマド・アッサーフがガザ地区やパレスチナの人々にどれだけ注目され、希望を与えているかが実感できる。

また、監督自身のこだわりも強い映画である。少年時代のムハンマド、ヌール(二人とも愛嬌があって可愛い)や仲間たちを演じているのは、オーディションで選ばれた実際のガザ地区の子供たち。パレスチナのシーンは、なかなか撮影許可が下りないにも関わらず、実際にガザ地区やジェニンで撮影している。さらに、青年時代のムハンマドをムハンマド・アッサーフ本人に演じさせることも考えたそうであるが、さすがに演技はイマイチだったようである。でも、ムハンマドを演じるタウフィーク・バルホームよりも、本人のほうがイケメン。
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