<概説>
水辺の別荘に集まった四人の男女。そのうち一人は回復不可能な精神病を患っており、彼女の不安定な動向に家族は心を悩ませる。どうしようもないこの狂妄の袋小路に、一条の光明は差し込むのだろうか。
<感想>
イングマール・ベルイマンの映画。
それを完全に理解することはできません。
ただそれは作品の内容を理解できないのとは同義でなく、どこか心底の方で言いたいことを察知してはいるのです。
白。黒。水辺。劇中劇。精神疾患。
鬼才今敏のように鮮烈な色彩を操っているわけでもないのに、これらの諸要素が独自の幻想譚を織りなしている。
観客もそれにのめりこむと言うよりは、ただ四肢を海面に投げ出しているような浮遊感でもって陶酔する。
物質的美と思弁的美と幻想的美。
これらを一作品にて完成させられてしまうのは、もう見事と諸手を挙げるばかりです。大衆的知名度こそ低いですが、これぞ名映画監督ですね。