柏エシディシ

鏡の中にある如くの柏エシディシのレビュー・感想・評価

鏡の中にある如く(1961年製作の映画)
3.0
ベルイマン生誕100年映画祭にて。

「神の沈黙3部作」「神の不在」「映画における形而上学探求」など仰々しい肩書が並ぶベルイマン作品。
しかし監督本人はその手の格式化や分析を好まなかったそう。
確かに本作を鑑賞するにあたり、そのあまりにも静謐で毅然とした佇まいに襟を正してしまいそうだけれど、語られるのはベルイマンの個人的葛藤や思惑が多分に含まれた私的告白の様に思われる。
彼岸に片足を踏み込んでしまった哀れな1人の女性を媒介にして炙り出されるのは3世代にわたる男たちの自己憐憫と悔恨の物語。
それはベルイマン本人の物語であり、ベルイマンの父親に向けた物語でもあり、普遍的な父と子の愛憎の物語でもある。
ベルイマン作品が揺るぎない古典であると同時に、現代にも有効な映画的魅力を湛えてる一端。
と、わかったつもりで分析しながらも、やはり解説不能な宗教的潜在的不安や不可視で名付け得ない事象に心惑う瞬間も確かに在り、それもまた、ベルイマン映画の底知れなさで、それもまた大きな魅力でもある。

まぁ、しかしながら、鑑賞中そんなごちゃごちゃ考えながら観ていた訳でもなく、ハリエット・アンデションの狂気とその危うい色香に夢中になり、スヴェン・ニクヴィストのカメラが切り取る素晴らしい映像の連続に身悶えしていただけでしたが。
映像リマスターの賜物でしょうか、およそ50年以上前の映像とは思えないクリアー且つディープな画面。
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