デニロ

たぶん悪魔がのデニロのレビュー・感想・評価

たぶん悪魔が(1977年製作の映画)
2.5
1977年製作。脚本監督ロベール・ブレッソン。

物語を思い出そうとしても何も出てこない。数人の美男美女があっちに行ったりこっちに来たりしていた記憶しかない。政治集会や教会でのアジテーションも虚しく耳には入らない。アザラシの赤ちゃんが毛皮のために撲殺される。その姿を記憶に残しながら、わたしの魂はわたしの肉体を離脱する。うろつき回る若者たちを空の上から見つめていたような気がする。ああ若き日のわたしもあんな風に彷徨っていたのか。そしてアザラシの子のように人食いに殺されることを夢想していたのか。チェホフのかもめのように。

唐突に場内のあかりがつき皆席を立つ。わたしも悪魔に憑かれていたようだ。たぶん夢魔か睡魔。

シネマカリテ  ロベール・ブレッソン にて
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