benno

たぶん悪魔がのbennoのレビュー・感想・評価

たぶん悪魔が(1977年製作の映画)
4.7
ロベール・ブレッソン監督作品7作品目…。

本作はこれまでのブレッソン作品とは趣きが違い、環境問題やエコロジーという今日的なテーマを取り入れています…。

1970年代…農薬の安全性や様々な公害がフランスでも問題となっていた頃…若者たちはこれらの問題に策を講じない政府を批判し集会を行なっていました…。

裕福な家庭に育ち屈折した自尊心を持った美しい青年シャルルは集会に顔を出しても違和感を抱くだけ…おまけに環境破壊を憂いて精神に変調をきたします…。

環境問題のみならず、生きていくこと自体に意味を喪失、刹那な享楽にしか関心を持たず、ついには自殺願望を持つように…最後に彼の選んだ道とは…?


映像はいつもながらのブレッソン・タッチ…あらゆるカットがキマりまくり…構図とカット割りを観ているだけで、暗い内容にも拘らずついニヤけてしまいます。シャルルの先輩ミシェルがチョコレートの箱を窓から道路に放り投げるシーンのカット割りなんて…完璧!! また、主要な若者4人がとても美しい…立っているだけで絵になります。

今作特徴的なのは…とにかくひたすら歩き続けます…パリの街路、夜のセーヌ川のほとり、さらに家の中でも…。下半身のみを映したショットがとても多く、音楽の流れない中で、路上に、敷石にコツコツ…軋む床にギシギシと響く足音をひたすら聞き続けることに…。

あらゆるモノを削ぎ落とし禁欲的な描き方をするブレッソンですが、今作はとても珍しく感情に直接訴えるような環境に関する映像を盛り込みます…工場から排出される高濃度のスモッグ、タンカーによる廃油、目を背けたくなるようなアザラシの撲殺映像…さらには水俣病患者を捉えた映像…

ただあくまでもシャルル個人の精神に影響を及ぼす一因として取り上げられているところがとてもブレッソンらしい…。

そして秀逸なラスト…!! 決定的瞬間はスクリーンの外で行われます…そして固定カメラで捉えた最後のカットに唖然!! 最高の構図です!!
benno

benno