菩薩

血の菩薩のレビュー・感想・評価

(1989年製作の映画)
4.8
ショットやら構図やらと言うものにてんで疎い俺でも、この作品のそれらがエゲツないレベルで展開されていく事はなんとなく分かる。こんなにもモノクロ映画の美しさや有り難みと言うのを実感する作品もそうそう無い。父親殺し、恋人との共謀、秘密を抱く兄、それを知らされない弟、父の不在が招く混乱、介入してくる叔父、一時の平穏の崩壊、そして逃避。人間の最も偉大な発明とは…もしかしたら「映画」なのではないかとすら思う。「血」と言うほど血が流れるシーンはほぼ無い、ただ兄の手は血を断ち切ったが為に傷ついている。逃れられないものだからこそ逃れてみせるラストシーン、だがその行く末は提示されない、たかだが10歳の少年は兄を断ち切り何処へ向かうのか。それにしたってこのヒロインは可愛すぎる…。霧の水辺に浮かぶ小舟…溝口ぃ…。わしの知っとるペドロじゃない…カラックスって言われればカラックスだし、ブレッソンって言われればブレッソンだし、なんか俺ごときが観て良い映画じゃない気がしてすまねぇ。血統を巡る作品から土地を巡る作品へ移行していく、って事なのかしら、冒頭の平手打ちで衝撃を受けるのは何も主人公だけでは無いはずだ。
菩薩

菩薩