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1:99 電影行動のnetfilmsのレビュー・感想・評価

1:99 電影行動(2003年製作の映画)
3.9
 2003年の香港映画界は、アニタ・ムイを子宮頸癌により、レスリー・チャンを鬱病による自殺で失い、悲しみに暮れていた。そこに来てSARSと呼ばれた重症急性呼吸器症候群により、国内の基盤はガタガタになっていた。SARSの最初の発症者は中華人民共和国の広東省に住む男性だったが、香港での感染は、同じく広東省の医師により広まったと言われている。中国からの旅行者がトロント、シンガポール、ハノイ、香港、台湾とそれぞれ入り、そこから感染源が爆発的に広まっていった。症状としては38°Cを超える高熱が出て、時に息ぎれ、呼吸困難、低酸素血症あるいは肺炎を引き起こすという。当時の香港の統計では2003年に1755名が発症し、そのうち299名が死亡した。

 事態を重く見た香港映画界は、超党派でSARSのない元気な香港を取り戻そうと呼びかける今作を製作する。監督には香港を代表するジョニー・トー、ワイ・カーファイ、フルーツ・チャン、テディ・チャン、ツイ・ハーク、チャウ・シンチー、ダンテ・ラム、アンドリュー・ラウら豪華な顔ぶれが参加し、それぞれ1分程度の短編集11篇を製作した。ジョニー・トーはその一番最初である「狂想曲」という2分程度の短編を製作している。多くの監督が、SARSに併せて作品を作る中、ジョニー・トーの短編は実に彼らしい。90年代後半から2000年代初頭にかけてのジョニー・トー組の常連俳優であるアンディ・ラウ、サミー・チェン、ラウ・チンワン、ラム・シューらが華を添える。

 アンディ・ラウたちは、ラウ・チンワンの会社の面接を受けに来た労働者であり、ミュージカル風の歌で盛り上げる。歌詞では大英雄を讃えており、観るだけで元気が湧いてくるようなジョニー・トー流の短編ミュージカルに仕上がっている。アンディ・ラウとサミー・チェンの『Needing You』コンビはカツラを被っており、香港の栄華に連なることになる元気な民衆たちを演じている。その映像は明らかに香港映画界の礎を築いたマイケル・ホイの『Mr.BOO!』シリーズのオマージュである。まるであの頃の香港映画界の活気をもう一度と言わんばかりの華やかな魅力に溢れている。
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