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シェフとギャルソン、リストランテの夜の4423のレビュー・感想・評価

5.0
1950年代のアメリカ。イタリアからの移民であるプリモとセコンドの兄弟が切り盛りするイタリア料理店には客がほとんど入らず、店は経営難に瀕していた。セコンドはある有名歌手を招き、転機を図ろうとするが…。

イタリア料理を囲み、みんなでワイワイと騒ぐ一夜限りのビッグナイト。

いやもう、これ最高だわ。文句なしの傑作。出てくる料理がどれも美味しそうだし、調理過程の描写もテンポがよく洒落ている。スタンリー・トゥッチ(髪がある!)をはじめ、イアン・ホルム(一番人間臭くて好き!)、マーク・アンソニー(若い!かわいい!)、イザベラ・ロッセリーニらが生み出すシビアなのかぼんやりしているのかよくわからない演技合戦も見逃せない。

しかし、それら全部をひっくるめてラストの長回しが沁みる沁みる!イタリア料理フルコースの後のシンプルな卵料理とパンがこんなにも美味しそうに見えるのは夢破れた後だからか。

プリモとセコンドの兄弟と彼らを取り巻くまわりの人々の結末はよくわからない。残された道は恐らく2つあるが、どの道を選ぶのかはあえてぼかされている。いや、寄り添いながら朝食を食べる兄弟の姿を見ると道は無限大のように思えるし、再生の息吹が聞こえてならない。お腹が空けば、必然と同じ場所に集まる。人間はよく出来ている。この二人ならきっと大丈夫なんだ。



☆【食う・寝る・出す】という行為は人間にとって欠かせない行為だ。たとえ作り物の世界であっても、その描写を疎かにしていない作品に出会うと「おっ!これは…」と思う。

出すに関しては色々と難しいものがあるのでここではおいておくが、寝るに関しては女優がバリバリ化粧をしたままベッドで寝てるシーンなんかがあると「ん?」と疑問に思ってしまう。すっぴんは難しいにせよ、工夫して欲しいよなあ。

食うに関しては『いつか晴れた日に』のエマ・トンプソンの音声解説が興味深い。ジェニングス夫人を演じたエリザベス・スプリッグスに対して「エリザベスは常に食事を楽しみ何でもたいらげてくれた。素晴らしいことよ。ほとんどの俳優はフリだけ」。

もちろん台詞があるので口に食べ物を入れてしまうと話しにくいというのはあるのだろうが、虚構の世界でそこまで求めてしまうのは野暮というものだろうか。
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