リコ

スウィーティーのリコのレビュー・感想・評価

スウィーティー(1989年製作の映画)
3.3
【オージーゴシック・ホームドラマ】

VHS題『スウィーティー/悪魔のような姉』
ジェーン・カンピオンの長編映画デビュー作。

エキセントリックで幼児的、攻撃的でありながら、父親からはSweetie(かわい子ちゃん)と呼ばれ溺愛される姉ドーンと、そんな姉に抑圧されて育ち、常識人であろうしながらも屈折していく妹ケイ。
終始スウィーティーに振り回されるケイと両親、そのボーイフレンド、脇の人物に至るまで(月並みな言い方で嫌になるが)クセが強すぎな面々が織り成す、いびつなホームドラマ。

オーストラリア映画って、プリシラやダンシングヒーローのような軽快で明るい物がある一方で、こういった日常風景の中の不気味さをボンと放り投げてくる物も多い印象がある。『ピクニックatハンギングロック』や『女と女と井戸の中』、『ミュリエルの結婚』も劇中に流れるABBAのディスコチューンとは裏腹に相当ねじれた映画だった。これらをまとめて"オージー・ゴシック"とでも呼びたくなる。
あのカラカラに乾いたどこまでも続く砂漠の道、照りつける日差しと強烈な青空の下で暮らしたら、たぶん気が滅入ってくる人もいるだろう。(すげえ偏見です)

そして、スウィーティーのような人間は、各家庭に1人ぐらい居そうな気がする。ここまでねじ曲がってなくとも、親戚中から鼻つまみ者、鬼っ子、ブラックシープ扱いされ、盆と正月の度に好奇の視線に晒されるような存在が。何を隠そう、私も一族の中では"スウィーティー"だ。だけど、育ち方で言えば"ケイ"でもある。(2歳上の兄も"スウィーティー"気質の子供だったので←今はまともな社会人です多分)
それはともかく、あまりにも手のつけられない怪物となってしまったスウィーティーに対して、外部の手に委ねようとするケイに、父親は最後まで介入を退け、頑なに身内で解決しようとするくだりは、見ていていたたまれなくなった。「身内の恥は身内で解決する(=もみ消す)」なんて、つい最近も日本で似たような事件が起きたりしているし、スウィーティーがまともに親の愛情を受けていたのは子供時代までで、そこから時間が止まったままだったんだろうなと思わせるラストだった。
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