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レッド・アフガンのHKのレビュー・感想・評価

レッド・アフガン(1988年製作の映画)
4.5
「ロビンフッド」「ウォーターワールド」などのケヴィン・レイノルズ監督によるソ連のアフガン侵攻を描いた戦争映画。キャストはジェイソン・パトリック、スティーブン・バウアー、ジョージ・ズンザなどなど

アフガン侵攻時、ソ連軍の戦車隊は民間人が住む集落に襲撃し、そこで一方的な虐殺や破壊を行った。生き残った民間人の怒りは爆発し、彼らに復讐を誓う。一方、戦車隊ではイスラム教の隊員を裏切り者と疑い殺してしまうなど仲間割れが発生する。果たしてどうなるのか…

アメリカ映画ゆえに、ソ連軍を描きながらもちょっと説教じみた要素が入ってしまうのだが、よくよく考えれば戦争そのもの自体が空しいものである以上、このメッセージ性もアメリカとかではなく言わなければいけないんじゃないかな。

映画序盤からソ連軍をとんでもないくそ野郎として描く。それこそ炎628におけるアインザッツグルッペンと同じほどのド外道っぷりである。それでもあっちはもっと激昂させるほどの不快な演出が際立つのに対し、こちとらは舞台が中東であるせいか物凄いドライに淡々と描いている。

民家を焼き払い、井戸に毒を放ち、家畜を皆殺しにする。歯向かう人間は戦車で轢き殺す。とにかく蹂躙しまくりで、こいつらが主人公側とはとても思えないほどにやりつくすのだから面白い。本当にあの序盤の爆撃シーンは良かった。

戦車の描写がとても素晴らしく。とにかくこの幻想的な砂漠をこの戦車が闊歩する所がアンビバレントな感覚を醸し出す。やはりそういう所がとても素晴らしいですね。弾を装填する所とかも浪漫溢れてかっこいい。

この物語では、アフガニスタン側の憎しみの感情や、ソ連戦車隊側の疑心暗鬼のぎすぎすした感情など、負のエネルギーを全体的にはらんでいる。主人公のコベチェンコが段々と信用を無くしていく過程がとても面白い。

戦車隊側にイスラム教の人間がいるのですが、敵側の宗教であるためスパイなのではないかと隊長に疑われ、それまでにもかなり気の弱そうで足手まといだと判断されたのだと思いますが、川で駐留している間に殺されます。

この戦車隊の隊長ははっきり言って、これまで私が見てきた戦争映画でも一位二位を争うほどに腹立ちましたね。前述した所もどう考えても酷いのですが戦場である以上しょうがないともいえる。

しかし、映画終盤、帰還する街までの道のりが谷で遮られていて渡れない中、やっと救助ヘリが来たのに、戦車隊のプライドにかけて引き返してたどり着こうとする。はああ?って思いましたね。ここまで狂っている人間とは思えませんでしたね。

映画終盤では前述した上官に反抗したせいで見捨てられた主人公が、結果的にアフガン側に加勢する形で戦車隊の報復に参加します。RPGでなんとか戦車を撃破しようとしますが、戦車砲だけにあたり本体は掠めます。

まあ、その後に見事に戦車隊はやられるのですが、まさかまさかの展開でしたね。やっぱり女は強しといいますか、ていうかこの女の人たち、復讐の火に燃えて怖い怖い。

いや~、しかしこの映画意外と怖いのが女性陣なのですよね。アフガン側の主人公たちは成長していくのですが、この女性たちはただアカをぶち殺したいという復讐心だけの存在になっている。まあそれでも良かったんじゃないのですかね。

この映画でも凄いと思ったのはしっかりとグロテスクで凄惨な死体をしっかりと見せていく所ですね。火炎放射器で民家を焼かれて中の人たちも見事に焼死体となっている所が、ちゃんと戦争映画におけるバタ臭さを描き切っているなと思いましたね。

あくまでアメリカ映画的なバタ臭さを残しながらも、人間の業の場面もしっかりと描いている所がとても良かったと思いますね。こういう負の部分が全て出るのが戦争ですから。だからこそ、人間の本質を確認したくなるために見たくなるのですね。

だからこそ、見れて良かったと思います。映画内ではコヨーテとかが襲ってくるところもありますがあそこも怖いのなんのですよね。でも一番怖かったのは、序盤から戦車に向かって乗り込んでいったイスラム女たちではないのでしょうかね。

ナナワテ
HK

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