半兵衛

イブの三つの顔の半兵衛のレビュー・感想・評価

イブの三つの顔(1957年製作の映画)
3.8
多重人格者とそれを治療しようとする医師のサスペンスチックなドラマは今見ても結構面白くて、後年この作品に影響を受けて多重人格を巡るサスペンスドラマが和洋問わず量産されていくのも納得。前半普通の主婦だった女性から別の人格が出現して医師たちと駆け引きを繰り広げるドラマも見ごたえがあったが、後半第三の人格があらわれて緊張感が走る展開も中々にスリリング。そして何より三つの人格を自然に演じ分けるジョワン・ウッドワードの演技の素晴らしさ、これだけの難役を演じられたのだからその年のアカデミー主演女優賞を獲得するのは当然。

でもこれだけ難しい病気がトラウマと向き合った瞬間治療されてハッピーになる結末があまりにも都合がよすぎて腑に落ちないけどね、ただ元が実話なので実際もこうだと言われたらしょうがないのだけれど。それとも50年代という時代だとここまでが限界なのか。

主人公が精神を病んでいく原因となった無理解でDVの気がある亭主を、別人格が誘惑してからかう場面は胸がスカッとする。

ちなみにこの作品を監督したナナリー・ジョンソンはジョン・フォード作品の脚本を手掛ける一方でオリヴィア・デ・ハヴィランドが双子を熱演したサイコサスペンス『暗い鏡』の脚本を担当しており分裂した人格に興味があったのだなと合点がいった。そしてそれが後年のサイコサスペンスやホラーへ影響をもたらしたという意味ではこの作家の存在は結構大きいのかも。
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