正直言って面白いとか感動するとかそういう完成度の高さは感じさせないが、どこか心に引っかかる作品だった。
『脱出』など見知らぬ土地で命を狙われるタイプの作品に属するが、この映画が他の作品と違うところは100%主人公たち州兵が悪く同情の余地がない点だ。沼地で演習中にそこに住む民族・ケイジャンの船を勝手に使い(一応謝罪の手紙は置いているけど)しかもそこの住民に空砲とはいえ発砲したりとそりゃ怒る人は滅茶苦茶怒るだろうということばかりしており、攻撃されてからも反省するどころか開き直ったりたまたま遭遇したケイジャンの人を犯人と決めつけリンチしたりと同情の余地がないことばかり。
また州兵のメンバーも頼るべき隊長はすぐにケイジャンに殺害され、残された面子はすぐ何かあると軍規や体面ばかり気にするくせにいざというとき何も決められない隊長代理、隊長の死によりぶちギレ捕まえた人質を殺害しようとしたりケイジャンの住居を爆破したりするイカれた男と全く頼りない奴らばかり。冷静に状況を観察して把握する主人公のキース・キャラダインやパワーズ・フーズが数少ない良識派だが、それでも他の人の愚行を止めようとしないため事態を悪化させているのであまり共感できなくなる。でもそれが州兵がケイジャンやトラブルにより一人ずつ殺されていくたびにホラーでバカな男女がモンスターに殺されていくような奇妙な爽快感になってくるのも事実だったりする。
命を付け狙うケイジャンの面子を終盤までほとんど出さず、まるで森が意識をもって兵士たちに襲いかかる映像になっていてスリリング。
後半のケイジャンのパーティーで誰が命を狙っているのかわからない状態でのやりとりもハラハラして楽しい(ただキースは女の子とのんきにダンスしているので少し興が醒めるけど)。
ハッピーエンドなのかバットエンドなのか判断がつかない不気味なラストが妙な余韻を残す。
ケイジャンの風俗を記録した貴重な映像も見所だけど、そんな協力してくれた人たちを狂暴な人殺し集団のように描くのはどうかなと思ったりもする。