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レス・ザン・ゼロのBaadのレビュー・感想・評価

レス・ザン・ゼロ(1987年製作の映画)
4.6
”ゼロ世代”の代表的作家、B・E・エリス原作の映画の中では比較的見易いだけでなく、完成度も高い映画。(他には、『アメリカン・サイコ』『ルールズ・オブ・アトラクション』など。)私は、『ルールズ・オブ・アトラクション』の凝った作りや、若者らしい未熟さをそのまま映像化してしまったようなところがけっこうつぼで、この作品よりも好きだったりするのだけれど、最初に映画化されたこの作品の端正な美しさには驚いてしまう。

小説の場合、往々にして処女作というのは、その作家のいいところが端的に出てきたりするし、これも、エリスの第一作だということなのだが、これは、原作がいい、というよりは、映画のスタッフの力量が優れていたという部分が大きいのだろうと思う。

撮影監督は『ヴァージン・スーサイズ』や『ミシシッピー・マサラ』のエド・ラックマンということで、私としては、とっくに見ていてしかるべき作品のはずだが、ようやく数日前に初めて見た。

この作品を撮った当時は、まだ売り出し中だったらしく、過去に撮った『スーザンを探して』のポスターが部屋に貼ってあったりしたのはご愛嬌。いや、さすがに、撮影はいいです。

子育てに忙しくて、映画もほとんど見ていなかった頃、テレビで見る『ビバヒル』や『アンジェラ』に登場する若者たちの描写の切実さに驚いたものだけれど、この映画は年代的に見てそういう青春物のながれの走りなのかもしれない。

テレビではなくて映画なので、卒業式のシーンや回想シーンを除けば、東部の大学から帰省したクレイがクリスマス休暇を過ごす数日間に集約して物語は語られる。高校を卒業してから事業に失敗して廃人寸前になってしまった友人のジュリアンをGFのブレアとともに救い出そうというのだが、なかなかうまく行かない。

それぞれの事情はありながらも、それなりにちゃんと大人になったはずの3人のようなのだが、豊かさ故か、まだ親を頼った方が良さそうなところでも、自分たちで手を打たざるを得なくなる。

ラスト近くの子ども時代をクレイが語るシーンで、3人の絆の強さと、肩を寄せて生きざるを得なかった厳しさが伝わってきてとても切なくなってしまった。若い頃って、本当に、こういう風に、いくら手を尽くしてもどうにもならないことはあるもので、それは多分どこに暮らしていても、豊かでも、貧乏でもあまり違いはないのだろう。

麻薬の売人役のジェームズ・スペイダーを含め、役者さんたちも皆おおむね適役で好演していたのが印象的。

(エド・ラックマンの出世作 2010/2/20記)
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