むぅ

青いガーディニア/ブルー・ガーディニアのむぅのレビュー・感想・評価

3.8
私はシリアルキラーになる。

そりゃもうNetflixだって、ドキュメンタリーとして扱ってくれるだろう。映画にだってなるかもしれない。


誕生日に恋人にフラれ、勢いですることにしたデートで強いお酒を飲んだ主人公。
ところが翌朝、お相手が殺されていた事が発覚。泥酔したせいで彼女には記憶のない"空白の時間"がある。そして状況的にどう考えても自分が犯人。さてどうする?


耳が痛い。目も痛い。
何なら胃も痛い。
人によっては致死量のアルコールを摂取したとてほろ酔いどころかケロっとしていた時代から、相当量飲むと二日酔いになる事はある時代を経て、現在油断すると数時間記憶が飛ぶ時代真っ只中である。乱世。
記憶が飛ぶたびに殺人事件が発生していたら、ここ数年で容疑者になること十数回。
犯人ならば確実にシリアルキラーである。


記憶をなくしそれを辿っていく物語、というのは格段珍しいわけではない。
だが一度でもお酒で記憶があやふやになった経験のある人ならば、絶妙にあり得そうな世界線。
鎌倉で夜桜を見て(もちろん飲みながら)始発に乗ったら稲毛だった事以外に帰宅出来なかった事はないし、起きたら知らない人が隣にいた事もないしという自分への言い訳の虚しさよ。


正直なところ、オチはわりと簡単に予想がついた。
ただ主人公が信頼できない語り手というか、自己不信の語り手なので"身に覚え有り"としては何とも言えぬ臨場感がある。

相手の立場になって物事を考える。
日々意識しているつもりだったが、それがいかに"つもり"だったかを痛感するところとなった。
きっと誰よりも主人公に寄り添って観た。画面の中に入って「うんうん、まずはちょっと落ち着いて一個一個記憶を辿っていこ?わたしに出来ること何があるかな、何でも言って」と言いながら水を渡しつつ味噌汁でも作りたい。

ほぼ同量の飲酒量ゆえに一緒に飲んでいると四天王と言われる友人たちにもこれを観てもらわなければ!と思ったところで、今はもう死語であろう「赤信号みんなで渡れば...」的な自分の稚拙な感情とも向き合う。


・相手の立場になって物事を考えるのは"つもり"の場合が多く、本当に出来ているのか
・あの人だってと他人を巻き込まず、自分自身の反省点を見つめなくてはいけない
・そもそも記憶をなくすほど飲んではいけない

という3点を学んだ。今更。

先日初めてお酒をご一緒した方との楽しい宴、二軒目後半から解散、途中の乗り換え駅までの記憶がない。
その方の生存確認が取れているのがせめてもの救い。
むぅ

むぅ