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幸せなひとりぼっちのaiaiのレビュー・感想・評価

幸せなひとりぼっち(2015年製作の映画)
3.6
ある種のスウェーデン版高齢者ドキュメンタリー。
ソーシャルネットワークが成熟した国の課題とは?
~リメイク味くらべ(オリジナル)~

この映画、いったい何が面白いんだろう?と思ったご同輩も多いかと思う。

それは、日本古来からのホームドラマが少なからず影響している。

古くは「森繁久彌」とか、近しいところで記憶にあるのは、頑固おやじやらせたら右に出るものがいない「蟹江敬三」とか。
いろんな役者さんらが頑固おやじを演じてきたが、その理由はホームドラマの座組に必ずといっていいほど「頑固おやじ」キャラがいたからだ。

「頑固おやじ」ってのは、リトマス試験紙みたいに何をかけたら何色になるかがわかっている単純な生き物(笑)

頑固だけど話し合えば良い人ですといった取り立てて珍しくない生態。

そんなありきたりの「頑固おやじ」ものがスウェーデンで大ヒットした理由は、少なからずあの国のお家事情が影響している。

- スウェーデンの高齢者は単身世帯が多い。理由は子供世帯と同居したがらないから。

スウェーデンの人口は1,000万人弱で、東京都の人口より少ない。

けれど、そんな北欧の小さい国は福祉大国として世界に名を轟かせている。
高齢化社会のお手本として、研究対象になっている。

ある内閣府の調査レポートで、日本とスウェーデンの高齢者の日常生活の比較をしたものがあるのだが、これが面白い。

両国の65歳以上の高齢者に対して調査した結果、日本の場合、45%の割合で、子供世帯と同居しているのに対し、スウェーデンは1~4%程度しか同居していない。

つまり、ほとんどが単身もしくは夫婦二人で生活している。

これは、あの国の福祉が充実し、質の高い医療を受けられるという社会システムに支えられている面も大きいだろうが、それだけではない。

子供や孫とのつきあい方の考え方について、

「子供や孫とはいつも一緒に生活できるのがよい」
 日本27.1%、スウェーデン3.7%。

「ときどき会って食事や会話をするのがよい」
 日本50.5%、スウェーデン72.7%

卵が先か鶏が先かというような話ではあるが、スウェーデンの高齢者は自分は自分、子供は子供という距離感を貫いている方が多く、そういった価値観にある高齢者の生活を支えるために、社会福祉が拡充されたという見方もできる。

だがそれだけではない。
隣人との付き合い方も違う。

「隣は何をする人ぞ」的な日本とは違って、スウェーデンは隣人との付き合いが多い。

老若関係なく、隣人が絡んでくる社会。

いわゆる「互助」、「共助」という枠組みが自然に身についた社会。

恐らく、スウェーデンの人たちは、みんな小さい頃から家庭以外の学校なんかでも、さんざんそれを叩き込まれているのではないかと想像する。

公共の場で困っている高齢者がいたら(そうみえたら)自然に手を差し伸べる人たち。

映画で主人公のオーべに若い夫婦やら、同世代がやれストーブ修理してくれとか絡んでくるのだが、あれはスウェーデンの一般的な生活図式と想定する。

この映画がスウェーデンで大ヒットした理由は、隣人あるあるが描かれているからだろう。
観客らは自分の生活圏内に今もいる、もしくは昔いた、頑固おやじらにオーべを重ねる。

- トム・ハンクスのリメイクやいかに?

トム・ハンクスがリメイクするということで話題になった本作だが、リメイクされなければ日本ではスルーされそうな頑固おやじ話ではある。

邦題にある「幸せなひとりぼっち」というのは言い得て妙。

妻と死別したことで幸せではなくなったが、最終的には周りの人たちとの関係を通して、幸せな単身生活をおくれたことは良かった。

オーべの人生は奇想天外であるし、最愛の妻を亡くした孤独はいかばかりか。

ただ、そこで自ら命を断とうとする行動心理は共感できない。
コメディとはいえ何度もそれにチャレンジ(?)する姿を描く必要はなかったか。

そのあたり、リメイクでどう描いたか楽しみ。
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