ベルサイユ製麺

幸せなひとりぼっちのベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

幸せなひとりぼっち(2015年製作の映画)
3.9
やっと観れました!
なんでこんな、有名な俳優ひとり出ていない地味そうな映画が変に有名で、みんな高い評価を与えているのだろう?実際ツタヤでも常時貸出中。…?と思ってましたが、正直観てもよく分かりませんでした…。
物凄く良い作品です。観れば皆んな好きになっちゃうような。で、“分からない”の部分は、謎めいた伝播力です。日本人とスウェーデン人には似通った感受性があるのか?そういえば職場のBGMでカーディガンズがかかると泣きたくなります(それはただの悲しい思い出のせい)。ぐっすん。



…ちょっと土手を散歩してきました。映画の話をしましょう、させてください…。

同じような家が建ち並ぶ閑静な住宅街に住む、極度に几帳面で偏屈な老人メーヴェは、妻の後を追い自ら命を断とうとしています。いよいよ…というタイミングで、隣に越してきた賑やかな一家の騒動に巻き込まれ、彼の愛する“孤独”や“規律”はめちゃくちゃに引っ掻き回されてしまいます。おちおち死んでもいられないよ!はじめのうちこそ、ただ鬱陶しく感じていた隣人のプライベートへの介入も、次第に彼の生活の一部になり、徐々にメーヴェは他人に心を開くようになります…。

暫く土手を歩きながら、「この話は何か凄く複雑な事を隠喩的に忍ばせているのではないか?」とか「インサイド・ヘッドみたいな構図になってはいないか?」とか「カーディガンズのCDどこいった?」とか…
うう… …ぐすん…
…か、考えていたのですが、どうもそういう事では無く、本当にただただ良くできた正しい映画なのだなと思い至りました。教訓や知恵のタネがあちこちに散りばめられていて、笑顔になって、力も湧いてきて、変化も旅立ちも前向きに受け止められるキッカケになるような優れた映画。そりゃあ皆んな好きになるわけです。とにかく脚本の練り込み具合が凄い!実はとても小さな規模のお話なのですが、構成・配置の妙で大変な広がりを感じさせます。ホント良くできてるなぁ。データが少ないので殆ど思い込みに近いのですが、スウェーデン映画って、人間の心情を行動ときっちり同期させて、パズルのようにはめ込んでいく物語作りを好むのではないかな?例えばアメリカ映画だと(意図的に)心情と行動をギクシャクさせて、結果なるようになったから良し!とするものが多いと思うのです。日本人はどちらに近いかというと…。
好みの差はあるかと思いますが、とにかく良質な作品です。個人的には“普段ヒーロー物しか観ない人”や“年間10本位しか映画を観ない人”に推薦して「他になんかこんなの無い?」って言わせたいですね。あ!あと、長毛種の超可愛い猫ちゃんが出ます!撮影には2匹使ったそうなので、ネコネコメーターは2🐈です!
…ところで、メーヴェはしあわせだけど、せいぜい半年くらいしかひとりぼっちじゃなかったんですよね…。ぐっすん。♪アーイ ウィル ネッバーノウ♪(カーディガンズ『カーニバル』を脳内再生)

〈蛇足〉特典の監督インタビューによると、好きな日本の映画は是枝監督の『ワンダフル・ライフ』だそうです。なんか分かる。更に、スウェーデンの至宝トーマス・アルフレッドソン監督が次回作(スウェーデン文学の『はるかな国の兄弟』という作品だそう)を準備中だとか!朗報‼︎










〈空に向けて私信〉
CDの方。あなたのおかげで私は愛を知りましたよ。何処かで誰かとお幸せに。いつも願っています。