ねぎおSTOPWAR

雲を抜けた月のようにのねぎおSTOPWARのレビュー・感想・評価

雲を抜けた月のように(2010年製作の映画)
4.0
この映画で描かれる政治状況・・「なんだこの既視感は」って思ったら琉球だ。
江戸の末期から戦争に至る時期は、好戦的な国に挟まれると大変なことになる・・。
もちろん当時の日本だって一つ間違えれば植民地にされるわけで、ギリギリの交渉。治外法権や税金など苦しめられたことは間違いない。
当時日本の特殊な事情は、欧米からは圧力を受けたが、一方で韓半島と中国に対しては欧米と同じように圧力をかける側であったこと。
琉球においては薩摩と中国の板挟みであった政府の憤りが国民に吐かれることはなかったが、朝鮮王朝は自らを守ることのために国民を犠牲にし、金銭的にも何にしても人間の盾と化した悲劇。

上で江戸末期と書いておきながらであるけれどw
これは豊臣の軍勢が韓半島を襲った頃の話。
中国王朝は明から清へ移ったタイミング。
この時期を舞台にした映画ってかなり多いんですよね。
『天命の城』
坂本龍一教授が音楽を担当しました。国王は仁祖で丙子の役という清が朝鮮に侵攻した話。
『神弓』
同じく丙子の役。そこで活躍した弓の名手の話。
『血闘』
パクフンジョン監督。光海君の時代だから清がまだ北部の女真族だった時の話。
『剣客』
明と清が争う中、光海君が政争のために王朝を追われた後、側近だった男が朝廷と戦う話。
『ハンサン~龍の出現』
今度公開される映画。文禄の役(壬辰倭乱):1回目の侵攻における李舜臣(イ・スンシン:伝説の海の将軍)の亀船を使った闘いを描いた作品。
『バトル・オーシャン 海上決戦』
慶長の役(丁酉倭乱):2回目の侵攻における《鳴梁海戦》の李舜臣(イ・スンシン)の話
『天軍』
タイムトラベルFANTASY。李舜臣(イ・スンシン)が出てきます。

・・まだまだありますけどこれくらいにしておいて・・

【おはなし】
この「雲を抜けた月のように」はちょうど1592年の文禄の役(壬辰倭乱)(:秀吉による1回目の侵攻)までを舞台にしています。主な登場人物は4人。
そもそも平等で平和な朝鮮を夢見、日本軍の脅威に対抗するために出来た組織《大同契》テドンゲ。
そこで急進的な思考に囚われたのがイ・モンハク(チャ・スンリョン)。
彼は自分たちのリーダーを裏で暗殺させ、日本軍(倭軍)を倒したとて王朝は自分たちを殺すだろうと考え、まず要人を暗殺しまくり、朝廷を攻撃する。
暗殺された要人の一人の庶子であり家族で一人生き残ったギョンジュ(ペク・ソンヒョン)。重症を負ったかれを救ったのは盲人で剣士のジョンハク(ファン・ジョンミン)で、彼はかつて《大同契》の一員だった。
モンハクの彼女である妓楼のペクチ(ハン・ジヘ)を好きになったギョンジュ。それぞれの思いを持ってモンハクを追うことになった3人。
そしてついにたどり着くと、そこには・・・


映画の中で、ジョンハクは家族にいじめられまくっています。
それは父が外で作った子供だから。
しかし父は「お前がまず強く戦うことが大事なんだ」と言ったか言わずか、黙って見つめるわけです。一言縛られる彼に言ったのは「今の王も庶子だ!」・・・宣祖(ソンジョ)のことなんですがねw・・イ・ビョンホンも演じた光海君(クァンヘグン)の父です。光海君もまた庶子です。


【映画の後に・・】
文禄の役(壬辰倭乱)と慶長の役(丁酉倭乱)は時間も近いことから文禄・慶長の役(壬辰・丁酉倭乱)とも書かれますが、1592年に始まり1598年の秀吉が死んだことで終わります。
この戦争によって韓半島はかなり荒れ、当然ながら国力も落ちます。朝鮮を支援した明もまたダメージを受け、後に清に取って代わられます。
だから朝鮮王朝の側に立つと「日本が終わったら今度は清かよ!」という気持ちになるわけです。上記した『天命の城』『神弓』・・ちなみに『ハンサン』で主演のパク・ヘイルはこの2作にも出ていますww


日本は徳川の世になったことで平穏な時代を迎え、むしろ朝鮮とは友好的に付き合おうとします。それが<朝鮮通信使>。しかしさっきまで侵略しておいてそれはないだろ!となるのが必然。そこで外交上頑張ったのが対馬国でした。そして・・朝鮮王朝は対馬が言う言葉に嘘があることも、前代未聞の対馬が作った偽外交書も、見破っていたのにもかかわらず、清のことがあるからひとまず日本とは和平を結ぶ方を選んだんですね。


そして徳川の時代が終わると、今度は大日本帝国と名を変えた国が秀吉と同じように侵攻し、植民地化していったのです。




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ファンジョンミン27/36

チャ・スンウォン차승원出演映画completed 2023.9現在
filmarks未掲載:「ラブリーライバル」「同窓生」
*日本未公開+ソフト未発売は除く