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サンダーハートのRのレビュー・感想・評価

サンダーハート(1992年製作の映画)
4.5
ノースダコタ州はデッドランドというアメリカ先住民の保留地で、ARM(Aboriginal Rights Movement 先住民の権利を訴える保守派)と、合衆国を支持する改革派の間で紛争が起こってて、レオという名のインディアンがライフルで殺害されるところからストーリーが始まる。結構ややこしい話なので、じっくり頭に内容を入れながら見進めなければならない。主人公はFBI捜査官のレイ。父がスー族のハーフなので適任だということで本件の捜査に充てられるのだが、彼は自分の血筋のことを好ましく思ってない様子。保留地に行ってインディアン達に会っても、彼ら側に自分が所属してないことを誇示するかのような態度。そんな彼が、ベテラン捜査官のクーデルと、3日間という短期間で、この事件の犯人であると推定されているARMのリーダー、ジミーを探し出そうとするミステリー。ボクは普段の生活でインディアンたちをあまり見ることがないので、前半は人物の見分けがつきにくかった。とにかく聡明な女(マギー)と派手な髪型した男(リーダーのジミー)がARM側で、車乗り回してバキュンバキュン撃ってくる五月蝿いヤツラが改革派と見れば分かりやすい(はず)。で、テンガロンハットのバイク乗りが部族警察のウォルター(別名:黒い馬)で、彼は犯人はジミーでは絶対にないと確信している。一体真犯人は誰なのか…そして何のためにレオという名のインディアンは殺されたのか…。さて、本作最大の魅力のひとつは、やっぱ荒野に暮らすインディアンの生活風景でしょう。白人たちに土地を奪われ、除け者にされながらも、決してインディアンとしてのアイデンティティと誇りを失わず、自然や霊を肌で感じながら、慎ましく暮らしてる。はじめは少々奇異に映るのだが、見てるとだんだん、いや、インディアンの方が人間として断然自然で豊かな生活を送ってるんじゃなかろうか、てか、むしろおかしいのは白人たちでは、と思えてくる。その見え方の変化はかなりエキサイティングで、まさに同じ心情の変化を主人公のレイが経験していくのだ。で、本作の最大中の最大の魅力は、FBI捜査官レイを演じるバルキルマー。非常に個性的な顔のかなりの好い男やから目の保養…ってだけにとどまらず、演技がホントに素晴らしい。見てる我々が、前述のインディアンに対する気持ちの変化を果たすのは、飽くまでレイのインディアンに対する反応を通じてのこと。バルキルマーの絶妙な演技がいかに優れているか、それでわかるというもの。始終彼に釘づけでした。あと、ボクの好きなサムシェパードもいい顔といい演技。おふたりコンボでたまりません。で、終盤に至るまで事件の全体像はベールに包まれてるんやけど、それが剥がされるとき! その恐ろしさに鳥肌立った! これ実話にかなり近いらしいっす……マジひどすぎ……人間は修羅の世界に狂うと、かくも最悪な魔物になれるのだ、何と怖ろしいことか! からの、ラストはまさかの深い深い深い感動! うおーーーー!!! シビれた! 涙溢れた! ちなみに、途中で、ネイティブアメリカンの歴史上重要なウンデッドニー事件が言及されるんやけど、ご存知ない方はちょっぴり調べてから見ると、より深く彼等の悲しみを理解できるのでは、と思います。軽くそこにも触れとこかと思ったけど、長くなるのでやめときます。あ、あと、映像が大変美しく、特に荒れた大地を高い位置から撮った画がしばしば挿まれるのが視覚的にダイナミックやし、音楽も深く霊感を帯びたテイストで、素晴らしかった。また是非見たいと思いました。
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