似太郎

天はすべて許し給う/天が許し給うすべての似太郎のレビュー・感想・評価

5.0
【幸福の限界】

50年代に流麗かつ甘美な映像美でシネフィルを虜にしたダグラス・サークの代表的メロドラマ。表面的には明るいが、内実は非常に醜悪というこの頃のハリウッドらしい皮肉な作品。

進歩的な考え方を持つ庭師のロック・ハドソンが典型的マッチョ男性として描かれている辺りがイビツで面白い。

そのハドソンと主演した保守的上流階級のおばさん、ジェーン・ワイマンとの愛の交歓が観ていて切ないというよりは寧ろシニカルなムードで進行する。この頃のユニバーサル映画のテクニカラーは本当に色鮮やかで美しい。

🦌鹿がチョロっと顔を見せるご都合主義的なラストは少し興醒めだったが、総じて完成度の高い不倫メロドラマとなっている。人工的で整ったスタジオシステムはコッポラの『ワン・フロム・ザ・ハート』にも通じる古めかしさ。

(様々な映画作家に影響を与えたと言われる本作だが、唯一マーティン・スコセッシはサークのアプローチに批判的であり『エイジ・オブ・イノセンス』を作る際本作へのアンチテーゼとして「不倫」の醜悪さを描いている)
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