かすとり体力

ダージリン急行のかすとり体力のレビュー・感想・評価

ダージリン急行(2007年製作の映画)
3.7
ウェス・アンダーソン監督作品。

私はこれまで同監督作品は『グランド・ブダペストホテル』『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』の2作品しか観ていないんだけれど、その2作品だけでも氏の圧倒的な作家性はビンビンに感じた次第。

本作、その2作と共通する点と異なる点を感じ、それは以下のとおり。

まず共通する点として、非常に「神を細部に宿す」系統の映画であること。

言い方を変えると、「何を見せるか」というよりも「どう見せるか」というところに軸足がある感じです。
つまり、一般的にはテーマや物語を伝えるための手段として演出や意匠等の「映画的手法」があるのに対し、氏の作品ではそれが逆転しているように見える、という。
「映画的手法」を最も望ましい形で届けるためにテーマや物語を設定しているような節があるし、
それが同監督の圧倒的な個性・強みとして機能していて、本作でもその特徴は変わらず。

とにかく終始「ルックが良い」し、物語もメインストリームよりもむしろその他「枝葉」のところ、たいして本質に影響がないところこそ面白い、みたいなところがあると思います。

一方異なる点、ここは上記と相反する要素にはなるんだけれど、2作品と比べると、(相対的に、ではあるが)ストーリー性・メッセージ性の強い作品だった。

「過去に縛られず生きよう」というテーマを伝える映画表現として、本作のラストシーンは至高でしょう。アクションとルックとテーマがしっかりと結びついていて、そこに流れるあの音楽、これは感動必至。

鑑賞後の印象としては、過去2作品同様、
「めちゃくちゃ面白かった!!」とはならないものの、上述の「映画的表現」をメタ認知させてくる手法と、毎度毎度ラストの余韻が最高に良いことによって「わあ。良い映画体験させてもらいました。またよろしくお願いします」という感じ。

ということで、総合的に満足。
他作品もちょいちょい見進めていこうと思います。
かすとり体力

かすとり体力