♪ 朝目が覚めるとキミがいて
チーズタルト焼いてたさ
これが、オシャレ映画…なんですかねえ。
『グランド・ブタペスト・ホテル』や『犬が島』を仕上げたウェス・アンダーソン監督の作品ということで身構え過ぎた気もしますが…正直なところ、麩菓子みたいな感覚でした。
何しろ、黒くて太い外観ですからね。
そりゃあ「噛めばジワッと旨味が出るのだろう」なんて思うわけですよ。「脳髄蕩けるほどの甘さを味わえるのだろう」なんて期待しちゃうわけですよ。
しかし、実際はサクッでもなく。
フニャッとしているんです。
しかも、湿気を帯びると小さくなる始末。
これが、オシャレ映画…なんですかねえ。
確かにクスリとした笑いはありますけども。
ベルトが行ったり来たりしたり、毒蛇を持ち込んだり、女性を口説くときは同じ曲を流したり…。
でも、生命力を感じないのです。
そう。監督さんの意図する映像であることはビシビシと伝わってくるのですが、涙とか汗とか屎尿とか。生臭いドロドロとしたものは確実に削除されているのです。
ただ、それが味なのでしょう。
その軽さが大切なのです。
映画の中まで現実を引きずる必要は無いですからね。
だから、僕と相性が悪いのも当然の話。
“何処に価値を見出すか”が違うのです。
僕は“キラキラと加工された絵本を読みたい派”ではなく“身悶えするようなリアリティを観たい派”。もしくは“野暮ったくとも泥の中にキラリと光る一瞬を逃したくない派”ですからね。
まあ、そんなわけで。
現実逃避したいときにピッタリの作品。
考えてみれば、インドに行けば何かが変わる…そんな想いを抱くところからして現実逃避ですよね。
最後に余談として。
冒頭に引用した歌詞は『甘い恋人』という曲から。感想を書いているうちに「代×山オシャレファック」という言葉が頭から離れず…いや、他意はないんですけどね…何故だろう。不思議だなあ。