ごろちん

下女のごろちんのレビュー・感想・評価

下女(1960年製作の映画)
4.3
ジャケットのおどろおどろしい感じ、最高です。額縁に入れて飾りたいくらい。

愛憎の縺れから一家が泥沼に嵌まって抜け出せなくなる感じがじわじわと怖い…。一人の男を巡り、本妻と家政婦のバトルはメロドラマの域を超えてホラー感すら漂う。家政婦の表情が段々と変わっていくあたりはさながら『シャイニング』のよう(言い過ぎ?)

広い家に引越したにも関わらず狭い空間で繰り広げられる愛憎劇は、心理的な閉塞感を煽っているようにも思える。そこに色の無い映像がさらに輪をかけ、切羽詰まった家族の姿を如実に表している。1階と2階を繋ぐ階段はそんな家族の危うい心の象徴にも見えた。

この映画の面白いところは、社会的地位が低くいとされた家政婦が階段を昇り降りするかのように裕福な家庭に介入していく中で、人間の心の奥底にある妬みや嫉み、エゴイズムが滲み出てくるところ。儒教の精神を重んじる韓国の家庭が一つの綻びから呆気なく転落するさまには、人の繋がりの脆さすら感じてしまう。

テンポが良くて観やすい分、たまに発せられるインパクトの強い台詞だけが宙に浮いて、シークエンスとチグハグな感じになり笑いが起こるのは、この監督の作品の特徴なんでしょうか。「次は何を言うんだろう」とワクワクさせられるところも魅力の一つなんでしょうけどね。
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