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不安は魂を食いつくす/不安と魂のyのネタバレレビュー・内容・結末

4.7

このレビューはネタバレを含みます

「日本の悲劇」ならぬ、「ドイツの悲劇」だ。たまらなく苦しく、狂おしいほど好き。
ブリギッテ・ミラ演じる心の広いドイツ女性とモロッコ人男性の運命的な恋、それを阻む周りの狭量な人間たちを描く。この映画におけるキャラクターの心情を読み解くには、根底に存在する黒い九月事件によるアラブ人に対する強い差別を理解する必要があるかもしれない。給料が入ったときに主人公がポロっと漏らす「これで天国の一片でも買いましょうか」という台詞に号泣。自分の感情のままに、非論理的に人を差別し、都合の良い時には頼ろうとする人々。ドイツ人からもアラブ人からも否定的な視線を浴びせられ、イソップ寓話でいうコウモリのようになった彼女を見るのが辛かった。
「悪人」であるドイツ人に媚びを売ることを嫌い、故郷の癒しを求めるアリの気持ちも理解できないわけではないが、あまりにも残酷だった。人が人を差別する理由に明確なものなどなく、賃金や環境、何だって粗探しをして差別を求めるのだ。画面の中心に人を置き、左右の八割ほどを圧迫感のある壁で覆うシーンの多さが、彼らのおかれる過酷な監視・ストレス社会を物語っている。大傑作。
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