茶一郎

シェーンの茶一郎のレビュー・感想・評価

シェーン(1953年製作の映画)
4.4
『 シェーン! カムバーック! 』

 と、もはやパロディの対象にもなっているセリフが有名な、西部劇の傑作中の傑作。誰もが一度は見たことのある神話的なストーリーの元ネタとして、その名を映画史に刻んでいると聞く。

 ある家族と出会い、人妻に惚れ、子供に慕われ、最後には、その家族を守るための行動の報いとしてその場を去っていく。
名もなき流れ者、名がない男のモチーフ。この映画における名もなき『シェーン』、それは時代を超え、ある時は「エル・トポ」のガンマン、またある時は「ペイル・ライダー」のイーストウッドであり、「マッドマックス2」のマックス、「ドライブ」の名もなきドライバー、と誰もが一人に一つずつ、映画体験における『シェーン』を持っているはず。

 スクリーンの奥の奥に広がる大自然、雪山、あれ?水平線から小さな点が……こっちに向かってくるのは馬に乗った人だ!とそれは動く書割。
入植者と牧場主の小競り合いに流れ者のシェーンが参戦、家族を守るためとはいえ『人殺しは人殺し』彼はガンマンと不法地帯である西部の終わりの予感と共に去っていく。

『また、流れ者の殻を破れなかったなぁ……』
と彼の背中は、とても切なく見えた。
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 デジタル・リマスター版ということだが、あの『 カムバーック! 』なラストが暗い。
あれ?以前、見たものと違うな…と思い、調べてみるとラストは『夜』バージョンと『昼』バージョンに分かれているそう。(あまりの暗さに、自分が何か眼の病気になったのかと思った。)

 まるでシェーンが隣の家に引っ越してきたゲームソフトいっぱい持っているお兄ちゃんのような。基本的に少年の視点で進むこのストーリーと、シェーンとの思い出は、その子供からの『憧れ』が詰まっていた。
父親もシェーンに友情を覚え、母親は恋愛感情を抱く。「抱いて、強く抱いて」とシェーンを忘れるために夫にお願いする様子は、とても官能的。

『 好きになってはダメよ。どうせ、いなくなるんだから 』
と母親は子供に諭し、その通り居場所を追われるシェーン。
流れものはつらい。
茶一郎

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