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待つなジャンゴ引き金を引けのrollinのレビュー・感想・評価

3.6
待てジャンゴ!頼むからもっと溜めてくれ!!

開巻一発、ジャリジャリと粒の立ったエレキの音が、二輪で滑走するバギーのリズムに呼応する。強盗団によって処される老人。同67年に公開された『嵐を呼ぶプロファイター』を彷彿とさせるオープニング。夕陽の逆光に晒されながら、今一度SAAという名器の美しさを再確認する男と、あまりにエモーショナルなテーマ。フェリス・ディ・ステファノによる音楽は全編に渡って効いている。

主人公の名がジャンゴでは無いのに邦題にジャンゴと付くマカロニもある中で、アイヴァン・ラシモフは実に堂々とジャンゴを名乗る。若干クリス・プラットにも似てるナイスなマカロニ顔。ピースメーカーはもちろん真鍮フレーム。でも妹役は実の妹らしい。そして冒頭で殺された老人がジャンゴの父親だったのだ!

物語の構図としては、協力者であるメキシコ人バリカと共に町のサロンに入り浸っているジャンゴのもとに、強盗団のボスであるアルヴァレスが次々と刺客を送っていくというもの。カード好きの酔っ払いや、棺桶屋の爺、現場で劇伴を奏でるマリアッチといった記号キャラは申し訳程度の配置。

本作に独自性を見出すとすれば、バリカの台詞から拝借した邦題とは裏腹に、とにかく“ジャンゴが待たない”という点。相手が先にホルスターに手を掛けるカットが無いために、ただジャンゴのさじ加減で一方的にキルしているようにしか見えないし、早撃ちの説得力もない。申し訳程度のキャラ配置の中に何故か含まれていない法執行官が現場に居合わせれば、言い訳のしようがない。

ただ、上体がブレないアイヴァン・ラシモフの姿勢は実に美しく、更にはファニングする側の左手を固定し、右手で銃のハンマーを擦り付けるような撃ち方が印象的(当たるかどうかは別)。故に自然と腰溜めよりもやや高い、いわば決斗に於ける“小津カット”のような位置での構えになっている。ちな背面撃ちといった曲芸も出来る。

あと、全体的に美術や衣装がキレイすぎて、卸したて感がハンパない。カルロ・シーミが如何に自然にウェザリングを施していたのかがよく分かる。照明に関しても不自然な設計場面が多く、特に夜間シーンではテクニスコープ(クロモスコープ)のバキバキ映る特性が裏目に出てしまっている感がある。

ラストのローマ史劇をオマージュした円形闘技場的な絵作りやカメラワークは面白い。SAAはとにかく当たらない。そしてジャンゴはやっぱり待たないのだ!
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