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実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)の教授のレビュー・感想・評価

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「映画」としては「変な映画」であり、全体としては「面白くない」とは思う。
言いたいことがつまっていて。
言いたいこともはっきりしていて。
ただそれを「描く」ということに関しては、なぜこの「連合赤軍事件」への道のりを「映画にしたい」のかが本編だけでは感じにくい。

とはいえ。
折に触れて何度も見返す映画でもあって。
もちろん興味は「連合赤軍事件」について。
なぜ連合赤軍に興味があるかといえば、当時の時代の熱量への憧憬が挙げられるが僕はそうではない。
実際のところは誰もそう思っていて憚られることだから言わないだけだと思っているが、つまりはその「残虐性」への興味である。

本作ではその連合赤軍事件へと向かうまでかなり長尺のイントロダクションが用意されていて。1960年代後半からの学生運動(共産主義運動)の歴史をダイジェストで説明される。フィクション(物語)の語り口としていきなりつまづいているとも言えるが、そこを「映画」として本編に入れ込まないと知る機会がないほど、この点があまり語られないのが本事件の特徴でもあって、きっちりと描いてくれたことは評価したい。

やがて舞台は山岳ベースに移ってからはいよいよ、彼らの熱情とは対極の「現代の視点」から見れば寒々しい「総括」を巡る凶行も、ここまでじっくりと見せてくれている作品がほぼ皆無であるぶん、面白くは感じるが、一方で表層的でもある。
若松作品全般に言えるが、物語的なカタルシスやシーンはなく、演劇をドキュメンタリックに追っているので、映画としては退屈にも感じる。
ただ永田洋子役を演じる並木愛枝の憎悪をジワジワと膨れ上がらせ、赤軍兵士たちの素行を常に監視し、チクり「そうじゃないよ」「全然わかってない」「あなた自身のことなのよ」と終いには泣きじゃくるという「あ、コイツめんどくせえ」とコチラが思考停止してしまうようなタチの悪さなど、好演が光っている。

あさま山荘あたりの銃撃戦のカタルシスや、予算の関係も大きいだろうが、山荘内の空間に限定したやり取りは、原田眞人監督の「突入せよ!」とは完全に対をなしてきて、むしろ「部分が見たかった」という気持ちを満たしてくれる。

先ほどから述べてきたように、映画としての出来は首を傾げてしまうところは多いが、それでも本作を撮るというリスクや必要なエネルギーや熱情で相変わらず突っ走るだけの力量はものすごい。
何よりこの現代の日本、あるいは世界の状況こそが、山岳ベース内と構造的に何ら違いはなく、ご都合主義な現実や内面に対して「正しきことである」という論理を当てはめて、正義によって他人を痛めつけるという意味で、赤軍兵士と僕たちの差はそこまでないということを強く感じた。
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