矢吹

実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)の矢吹のレビュー・感想・評価

4.4
勇気がなかったんだよ
全共闘の実態。
我々は
この出来事を総括し
自己批判しなければならない。
実話だよ。
とんでもねえな。
あさま山荘の事件自体は知ってるし、
頭のおかしな奴らがいるなあぐらいの認識で、
15年ほど前にテレビの特集を見た記憶がある。
しかしこの作品の肝は、あさま山荘の事件の詳細ではない。赤軍の実録である。実態である。
道程である。
あさま山荘の事件は単なるゴールであって、行き着くまでの幾重もの物語が肝だから、めちゃくちゃいいです。
その上で、あの時思った、こいつら頭おかしいな。という感覚が、解きほぐされていく。
実際、完全なる頭おかしい奴らになってたわけだが、ここに至るまでの経緯は恐ろしいものでしかない。
そこに向けて今作は、全共闘、赤軍という活動の成り立ちからして痺れるナレーションで丁寧に可視化してくれるのよ。
最初はおしゃれ気分で始めた人もたくさんいるような気がするのさ。革命の気分ってさ。流行みたいなノリで、TikTokとかタピオカみたいなノリで、それが全共だったというだけの話でさ。それこそ、あの坂井真紀の演じた女は最初は自信なげに、胸を張り、行進に参加していたわけだが、
山荘へ行くことによって、世界が変わる。
人によっては、些細なこと。としよう。些細な運動から、集団が個を飲み込んで、エスカレートの先にあるのは、一見統率された集団とそれを構成する個による言い訳ばっかりだ。
社会主義、共産主義のためにってね。
反権威主義が、党結成の中でほとんど独裁政権へと姿を変えていく。反米、日本の権利主張、国民としての意識、プロレタリアがどうしたよ。
彼らの働きのおかげで今の日本もあるにはあるはずだけどさ。
世界に革命を。って。
世界で革命が起きてるって。
革命にはなにが必要なんだよ。
思想の統一か。
理想を掲げることか。
裏切り者を出さないことか。
罰を与えることか。
そもそもが思想を動かすなんて大層なことに対して、革命って何なんだ。
エロティシズムの議論から出発してみるに、
倒すべき相手がいるときに
反発が発生するときに
暴力は革命に変わるらしい。
なのに、
俺たちはなにと闘ってたんだ。
警察、国家権力と。だったはずだ。
しかし、自分たちの思想的統一との戦いが最も苦しそうだったよ。
やはり、観念なき行動は革命へは至らない。
ぱっと見、階級闘争のようでもあり、
反米を掲げた話ですが。
実際、左翼共が何故このようなことになったのか。確かに、世界に革命が必要だったからです。
是正が必要だったんだし。
おかしいことにおかしいということが。
それでも罷り通ることもありますし、
覆せることもありますよ。
地球の中ではいろんなことが起きた。
なら彼らの叫ぶ世界と俺らのこの国は何か違うのか?
そこにいたるにはあまりにも
当事者意識が低い社会なんじゃないの。
自分を持ってんだか、無思考、無指向なのか、わかんないけどさ。
この作品から思うに、彼らの敗北、自滅はオウムのような教祖がいなかった。オウムをポジティブに捉えるわけではないが、それでも、カリスマが欠けていた。ように思う。
やはり強い組織にはリーダーが必要だわ。
数が多けりゃ多いほどね。
というか、神やルールが必要だ。
そして何よりも、誰かにとって、
希望や居場所になりきれなかったんだと思う。
この辺もオウムとは別物。
そもそも、目指したものが違うんだろうけどさ。
この世にはルールというものがたくさんあって、競技や場所、集団によってそれは様々なのです。
とりわけ日本では、みんなバラバラの競技をやってます。その度、その都度に、神がいる可能性もある。残念ながら、少なくとも日本において、人生という競技のルールはまったくもって整備されてないです。思想の統一がなされておらん。
悲しい個人主義なんだよ。
民主ってなんだよって言いたくなる。
声を上げることは不可能なのか。
民主主義では変えられなかったのか。
強行採決。民の衝突。
実際何割の人が動いたのだろう。
日本にはあまりにも個人の中に顕著で細やかな内と外という関係性があって、
内の意識が非常に広いし、外の意識が狭い感じがするのよ、日本以外と比べてね、国として団結する前に、一個人としての幸福の保障を優先する。みたいな。
個に対して、外という概念が広過ぎる国。
が故に、国内でも争いすぎてるし。
人々が小さ過ぎる。
例えば、お客様は神様だってやつよ。
みんな同じ国の人で、同じ人間である、なんちゅう意識が低すぎる気がするんだよなあ。
民主主義の経済格差。よりも、
盲目的な幸福格差が問題だと思うし、
ようは、幸福社会主義の国なんだよ。
ほかの国のことまで語るには時間も文量も惜しいので、自粛しますが、
ここで、資本が幸福に直結してしまう現象が問題となる。
が故に、階級の壊れた、匿名性を帯びたソーシャルな世界ではより顕著になる感じだわ。
これは20年でも40年でもかけて、考えていかないとダメだと思う。
その頃には別の問題になってると思うけどさ。
いつのまにか、自衛のためのルールになってるじゃないか。
自由ってなんだろうな。
革命は結構だが、その先に何を見てるんだ。
どうしたもんなのかなあ。

この映画の中では、
どんな小さな役でも
実名、年齢、大学、所属
みんな生きてるんで。
個人を大事にした映画だ。
もちろん事実に則した話だから。
所属、集団で括ってしまいそうな姿勢を優しくお説教していただくみたいな。
そんなつもりはねえ、当たり前の話だって馬鹿呼ばわりされるだろうけど。
もうすぐ、だれも、戦争も暴動も知らない国になる。
めちゃくちゃ良いことですね。

役者もみんな、素晴らしい。
潮見から、森へ。高校生へ。
熱を完全に憑依させている。

正義と正義がぶつかってんのかなあ。
正義と信じるものが。だな。
やっぱやめたって言えないかなあ。
意地かね。
勇気がなかったんだ!!
大きな流れに逆らう個人の勇気が!
どんだけ正論垂れた社会だろうが、
そんなところに正解なんてあるわけがない。
と思いたいよ。

これをみて思い返す、三島が説得に向かった姿勢がかっこよくて仕方ない。

えらく長いんだけど、見れるね。
面白いっす。

結局、個人を捨てきれないから、
集団で大きくなったつもりで、
個人を主張し切る
俺たちは勇気がなかったんだよ。
相手のためになる思想はあるが、
相手のためになる暴力は存在しない。
と信じています。
若松孝二はいいよなあ。
矢吹

矢吹