イチロヲ

死体を売る男のイチロヲのレビュー・感想・評価

死体を売る男(1945年製作の映画)
3.5
猟奇殺人に手を染めている墓掘り人が、献体を必要とする医者を利用しながら、非道徳的な暗黙のルールを敷いていく。19世紀のエディンバラで発生した事件をモチーフにしている、サスペンス・スリラー。

解剖用献体の調達手段が、法で定められていなかった時分の物語。院長を尊敬する主人公の医学生、墓掘り人の行為を黙認する院長、医者から必要とされている行為(=殺人行為)に勤しむ墓掘り人。この顔ぶれが、倫理観を揺さぶるドラマを展開していく。

ジ・アンダーテイカー役を演じるボリス・カーロフの雰囲気作りが素晴らしく、丁々発止のセリフ劇も含めて、最高潮とも言える芝居を披露してくれる。重病患者として来院した幼女が、子供の勘で院長を忌避するところも面白い。

終局が近づくと、懊悩煩悶する院長が墓掘り人との縁切りを画策。医師として正しい道を歩もうとするのだが、「毒を以て毒を制す」が呪いをかけてくる。医学の進歩に付随するダークサイドを、じっくりと堪能することができる。
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