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黒部の太陽のKUBOのレビュー・感想・評価

黒部の太陽(1968年製作の映画)
4.0
「黒部ダム」「黒四ダム」という言葉は、子どもの頃「何かとてつもないすごいもの」の名前として刷り込まれた覚えがある。幼児の頃だったから、よく覚えていないのだが、家族で見学に行ったような覚えがある。その「黒四ダム」ができるまでの話。

三船敏郎と石原裕次郎の共演という超大作。宇野重吉と寺尾聡の親子共演もおもしろい。

ダムを作る話かと思ったら、その前の黒部立山連峰貫通トンネルができるまでが物語の主体。まだ人夫がツルハシを持ってトンネルを掘っていた時代の話なので、ともかく汗臭く、脂ぎった画面。SFXもろくにない時代に、ものすごい水を使ったトンネル内のシーンは、撮影自体も命がけなんじゃないかと思わせる大迫力!

子どもが命に関わる病気であっても、仕事に差し障るから父親には言わない方がいい、なんて価値観が時代的に大きな隔たりを感じさせる。昭和って、そんな時代だったのねって。

「人間に金と知恵と時間を与えれば、できないことはないはずです。」
「人間のすることに不可能ってことは、まだ山ほどあるさ。例えばガンだ。あいつはいくらジタバタしたって、絶対に助からんもんだ。」

未来に大きな希望を描いていた高度成長期の日本でも「癌」は不治の病だった。でも今では発見さえ早ければ手術でかなりの割合で生き残れる時代になった。この頃はまだ「魂」や「根性」で乗り越えた時代だったけれども、「人間に金と知恵と時間を与えれば、できないことはないはずです。」という言葉を信じたくもなる。

息の詰まるような工事シーンの合間に挟み込まれる、黒部の山々の美しさも目に焼きついた。昭和を代表する2大スター共演の幻の名作、堪能しました。

(ただ違和感があったのが、関西の人間が関西弁を話さないこと。昔は映画の中で方言を使わないようにしてたのかな?)
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