青山祐介

オルフェの遺言-私に何故と問い給うな-の青山祐介のレビュー・感想・評価

4.0
『私にとってコクトーは単に偉大な作家、偉大な小説家、偉大な詩人、偉大な音楽家、偉大なデッサン画家に留まりません。彼は何よりも文明の一事実であり、それが重要なのです。』
フランソワ=レジ・バスティド<ジャン・コクトーを裁く>1962年「アール」誌
 ジャン・コクトーとは何者なのでしょうか。私にはコクトーを語る「言葉」を持ち合わせていません。私の情けない想像力では、ジャン・コクトーの多様性、イメージの豊饒、詩人の操る「言葉たち」に追いついてゆくことができないからです。そこで、映画からコクトーのキーワードを取り出します。阿片、同性愛、鏡、不死鳥、半獣人、壊滅する煙突、不死鳥、ハイビスカス、彫像、仮面、シュールレアリズム、ジレッタンティスム、オイディープス、アンティゴーヌ、イゾルテ、スフィンクス、ユーディットとホロフェルネ、ペネロペ、ウルトビーズ、セジェスト…
詩人を読み解く「言葉たち」「役者たち」を、瞼を開いた盲目の預言者三つの顔を持つ「ティレシアスの彫像」に呑みこませると、三つの口からコクトーのイメージが吐き出されます。
『詩人:口から出ているのは、なんだね?
セジェスト:小説とか、詩とか、シャンソンとかです。眼が六つ、口は三つもっています。
でも、どうしてなどと、その理由をお聞きにならないでください。』
 詩人は、理性の女神ミネルヴァの槍で刺し貫かれ、そして再生します。詩人の血と再生の象徴であるハイビスカスの花がカラーで描かれます。
 ジャン・コクトーは1963年10月11日木曜日、永遠の眠りにつき、ミィイ=ラ=フォレのサン=ブレーズ=デ=サンプル礼拝堂に埋葬されました。
『友人たちよ、泣く振りをしたまえ。
 詩人は死んだ振りをしているだけなのだから』
青山祐介

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