アキラナウェイ

マイ・ライフ、マイ・ファミリーのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

3.4
大好きなフィリップ・シーモア・ホフマン目当てで鑑賞。

大学教授ジョン(フィリップ・シーモア・ホフマン)と作家を志す派遣社員のウェンディ(ローラ・リニー)のサヴェージ兄妹は、幼い頃に虐待を受け、疎遠だった父親のラリーが認知症になったと知らせを受ける。仕方なく父の面倒を見る事になる二人の苦悩の日々が始まる。

兄ジョンの専攻は演劇であり、妹ウェンディもまた同じ分野で作家を目指している事から、何かとぶつかる兄妹。

老人ホームに入れる事。
親に対して、自分達の対応を酷いと捉える妹と、過去の仕打ちを考えれば当然の報いだと捉える兄。

仕事についてもモメるし、親の介護方針についてもモメる。

見栄えの良いホームを選んだところで、それは死という現実を誤魔化しているに過ぎないという、兄ジョンの持論に妙に納得してしまう。

いつかは自分にも降り掛かるであろう、親の介護。
おまけに彼らには虐待という過去の因縁が付きまとう。
決して明るい話ではないものの、思ったより軽妙に流れていくのは、主演2人の演技力に他ならない。

特に更年期のイライラ感が絶妙にリアルなローラ・リニーの演技が素晴らしい。ローラ・リニーって、売れっ子女優っていうイメージでもないけど、本当に色々な作品でお見かけする。イライラ女子を演じさせたらまぁ上手い。

兄妹が盛大な口喧嘩を繰り広げるのを、空虚な目で見つめる父。認知症とは言え、自分の事で子ども達がモメているのを見るのは流石に辛いだろう。

機能不全家庭で育った兄妹の軋轢を見事に描いているものの、虐待については、台詞で語られるだけなので、彼らの陰陽を描くには少しパンチが弱い。

主演2人のファンでなければ、あまりおススメは出来ないかなぁ。

第80回アカデミー賞で、脚本賞(タマラ・ジェンキンス)、主演女優賞(ローラ・リニー)にノミネートされた実績はあるので、作品としては良質。