Punisher田中

イングロリアス・バスターズのPunisher田中のレビュー・感想・評価

3.8
舞台は1941年、第二次世界大戦中ユダヤ・ハンターと呼ばれるナチス親衛隊のランダ大佐は、良心のある家族に匿われていたユダヤ人一家をマシンガンで皆殺しにするのだった。一人を除いて。
1944年に、あの頃に逃げ出したショシャナはエマニュエルと名前を変え、パリで映画館主をしていた。
しかし何の因果か、彼女に好意を寄せるドイツ軍の英雄フレデリックは、彼女の映画館でプロパガンダ映画「国家の誇り」のプレミア上映会をすると強行してしまうのだった。
一方、ナチスハンターをし、日々ナチを惨殺しれいたレイン米陸軍中尉は、ナチスの要人が集まるプレミア上映会で、皆殺しの計画を進行するのだった...。

最低な歴史をクレイジーで愉快に""破壊""したタランティーノ作品、この手のストーリーというかテーマは同監督最新作の「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」にも通じる所がある。
舞台設定とこれから何が始まるのかを瞬時に把握させる洗練された冒頭は、完璧に仕上がりすぎてその後の展開は冒頭に見劣りしないか不安なレベル。
が、決して失速はせずにタランティーノらしい会話劇をメインとしていながらも、相変わらずの終盤にかけて行われる怒涛の大量殺戮がしっかり作品に溶け合っていて楽しめた。
今作の楽しさとスリルを生み出しているのは、勿論タランティーノの見事な構成力、演出力もあるが、1番はクリストル・ヴォルフ扮するランダ大佐の絶妙なキャラクターだろう。
知性や品性を感じる言葉使いと穏やかな性格、そしてヒョロヒョロとした軍人らしからぬ体型なのにも関わらず、たまに見せる残虐さや頭のキレようがこのキャラを通して作品全体に銃口を額に当てられているような緊張感を生み出していた。

しかし、イングロリアスバスターズというタイトルだった為にてっきり、レイン中尉がナチを撲滅するために結成した「イングロリアスバスターズ」が暴れ回る作品だと思っていたが、今作での立ち位置は主役と思わせての脇役なイメージ。
そこが少し残念というか、この作品としてそれは正しいのかどうかというモヤモヤ感が残ってしまった気がする。独と対立する米というシンプルな構図でなく、様々なキャラクターの群像劇として今作を描いているのが勿体なくも思えてしまう。
ましてや、レイン中尉も折角良いキャラクターをしているのに、登場シーンがランダ大佐よりも少ないからか、キャラをランダ大佐に食われ気味なのも悲しい。
まぁ、そんなことをちまちま言っといてあれだが、やっぱり歴史を破壊するようなラストの大量殺戮シーンが生み出す爽快感がたまらないので今作は名作。
やはり暴力は正義。