何本ものアクの強い映画をマシンガンのように一気にぶっ放したかのような、爆裂な詰め込み具合が炸裂するタランティーノ産ナチス撲滅ムービー!ナチス撲滅といっても社会派映画の側面は薄く、ひたすらにエンターテイメントに振り切れているのがタランティーノらしい。バイオレンス描写は相も変わらず『俺たちに明日はない』のラストシーンのような仁義なきカオスティックで、西部劇さながらの殺るか殺られるかの命の投げ出し合いに不謹慎だがワクワクしてしまう。
歴史に沿ってるかどうかなんて関係無し!何と言ってもカルト界の帝王タランティーノなのだ。だが、今作のオタク臭は非常にメジャー感があって分かりやすいため、この映画もアカデミー賞にノミネートしたりしているのがちょっと面白かった(笑)
〜あらすじ〜
時は第二次世界大戦時の1941年。そこはドイツ占領下にあったフランスの片田舎のとある民家。ユダヤハンターの異名を取るドイツ親衛隊のランダ大佐はそこにユダヤ人の潜伏を特定し、マシンガンで皆殺しにしてしまう。しかし、少女ショシャナだけは何とか逃げ延び、ランダ大佐は銃で狙うも、結局は発砲する代わりに別れの言葉を吐き捨てた。
その3年後。ナチス撲滅のために動く秘密部隊バスターズが始動していた。レイン米軍中尉率いるこの部隊は次から次へとナチスを嬲り殺しにし、頭の皮を剥いでいったのだ。
逃げ延びた少女ショシャナ、そして暗躍するバスターズの運命が交差する時がやってくる。それはナチスを壊滅させるべく、ある映画館を部隊にした決死の作戦だった。
ブラッド・ピットやダイアン・クルーガーといったビッグネームも出演しているが、彼らを完全に食ってしまうのが、ランダ大佐を演じるクリストフ・ヴァルツの存在だ。ネチネチとした頭脳派でずる賢く非道な男を完璧に演じきり、アカデミー賞助演男優賞を受賞。彼を世界的な俳優へと押し上げた。彼に対抗したのはやはりメラニー・ロラン。ラストの某シーンでのインパクトは絶大だ。
もう一つ特筆すべきはタランティーノお得意の会話劇だろう。一触即発な中でやり取りされるジリジリとした緊張感に引き込まれ、最悪の展開を否応にも想像してしまう。鮮血の美学の根回しは済んだとばかりに、爆裂する人間たち。有名俳優などおかまいなしにバタバタと死んでいく狂気の宴に呑み込まれる150分はひたすらに圧倒的だった。
〜おまけ〜
映画監督のイーライ・ロスがなかなか良い役で出てきます。出落ちかよ!ってくらいに登場シーンが最高です。あまり注目しなくても楽しめますが、タランティーノの後継者たる彼の素顔をこの機に覚えておきましょう(笑)