こなぱんだ

イングロリアス・バスターズのこなぱんだのレビュー・感想・評価

5.0
あの、もう、全てが素晴らしすぎてもう最終的に出てきた感想が「死にたい」でした。

こんな天才的な作品になぜ出会ってなかったのか、むしろ今まで見ていなかったことが本当に恥ずかしい……

この作品とても賛否両論あると思うのですが、私はタランティーノ作品の中でダントツの1位です。ワンハリよりも好きかも。

もう、素晴らしいところなんて挙げたらキリがないのですが少しだけ。本当に「映画」の素晴らしいところしかない。タランティーノの映画って本当に「映画」は素晴らしい!最高!としか言ってないよ……泣
だってリテイクの掛け声が「because....」
「「We love the movies!!!!!!」」ですよ、それだけなんですよ

タランティーノにしては珍しく王道なストーリーものでしたね

オープニングのイヤーな感じを撮る手法とか神、天才としか思えない。もう確実にガサ入れされるし誰か死ぬでしょ!っていう。「ノクターナルアニマルズ」のレイプにいたるまでの煽り運転シーンみたい。イヤーな神シーンベストに確実に入る。状況が、じゃなくて撮り方がです。そしてオープニング最後のショシャナが逃げるカットとか本当に本当に最高、素晴らしすぎるカット。「大脱走」のオマージュなんか入ってないのかな?

そして始まるブラピ部隊のやりたい放題パート。これ、ブラピ側の軍隊確実にナチスを模倣してるんですよね。だから必ずしもブラピ側が正義ではないんですよ。そのことをはっきりと示していて、ブラピ側の部隊もナチスも変わらないんだぞと、そういうことが確実に画に現れている。その姿勢がまず素晴らしい。だから、ただのアンチナチス映画じゃないわけです。

そしてブラピ部隊はナチス狩りをしまくっていくわけですが、ナチス兵士も冒頭のユダヤ人と同じくらい怯えているんですよ。画面で見ればそこに何の差もない。つまり、この映画は「ナチス」「バスターズ」「ユダヤ人」の差なんて本当はないことを示している。あるとしたら言葉くらいですかね。

俳優陣が素晴らしいのはもう何も言うまい……全員マジですごい。それだけです。

あとは問題のラストシーンですが(映画館のシーン)やっぱりナチス関係者が逃げ惑うシーンも、確実にユダヤ人大量殺戮の映像にも見えて、そこが本当に素晴らしいし、ナチスのマークが崩落していく画も画として完成されすぎているし、とにかくブラピの部下たちがものすごい表情で画面に映る「ナチス」と思われる軍人を穴が開くまで撃ち続ける。それってやっぱり今となっては「映画」でしかできない。絶対に「映画」でしかできないでしょ。そんなことで歴史は変わらないし、無かったことになんてならないけど、でも、「今」「現在」の映画を見た人々の認識は確実に変わっていきますよね。ただのエンタメで消費しきれないでしょ。そこが、本当に本当にすごいと思う。

そして、ブラピが額にナチスマークを刻むラストカットですが、反復ですね。さらにこのカットはカメラに向かって刻むアクトをする。「一生ナチスの印が消えない」ことを観客にも強いている。ユダヤ人の問題に関して、安直に言って悪いのはナチスかもしれないけれど、ナチスと、それを止められなかった他の人間全てに当てはまるし、もちろん誰だってナチスになる可能性がある、ブラピ部隊がナチスと全く変わらない映され方をされているように。そのことを、彼らは「私たち」に刻むのだ。

そしてエンドロールで流れるナチス・ドイツ音楽の最もたるような曲を聞きながら「かっこいい」と思ってしまう観客の私たちに、タランティーノは警鐘を鳴らし続けるのである。
こなぱんだ

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