SatoshiFujiwara

大通りの店/大通りの商店のSatoshiFujiwaraのレビュー・感想・評価

大通りの店/大通りの商店(1965年製作の映画)
3.8
屋根にとまったコウノトリのショットからカメラが緩やかに動いて人々で賑わう市内を俯瞰で映し出し、タイトルバックが入るとシーンは市中に切り替わる。恐らくは休日なんだろう、人々はいかにも楽しそうにはしゃいでいる。ある種のチェコ映画にしばしば見受けられるこういう温かみあるほのぼのとした導入から終盤どのような結末に繋がって行くのか、ストーリーは分かっていてもいざ見終わってなかなかに衝撃的であった。

外面と内面、建前と本音、世間体的体裁と身も蓋もない真実…。戦時下に生き延びるための世間智。もっと言えばチェコ的二面性。そのような二重性の表象と皮肉は、先にも記した屋根のコウノトリ(2回登場)、酒の入った人の良い家具職人が親ナチスの義兄をグラス越しに眺めて歪んで映る顔を捉えたショット(同じシーンの最後に義兄から貰ったタバコ入れに付いた鏡を覗いた際に同じく歪んで映る家具職人の顔もカメラは捉える)に表されているように思うが、老婆の店の真ん前にナチスによって建てられているタワーのようないかにもハリボテで陳腐なモニュメントにもまた苦笑させられる(独裁者はその権力を誇示するためにでかい建造物を作りたがるが、それが矮小化、カリカチュアライズされている)。

屋内と野外の空間的対比をもうすこし明白にすればより効果的な画面になっていただろうし、ちと長い。しかしそういう点を超えて胸に迫る作品。良かったっす。

※チェコスロヴァキア・ヌーヴェルヴァーグ特集で会期中1回のみ上映、おかげでイメフォむちゃくちゃ混んでました。予備席&通路に座布団まで出たぞ。
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