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飢餓海峡のnekosukiのネタバレレビュー・内容・結末

飢餓海峡(1965年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

この映画を観たとき、何故か"ドストエフスキー”の「罪と罰」が頭に浮かんだ。
金貸しの老婆を殺した"ラスコーリニコフ”が清純な娼婦"ソーニャー”に出会って犯した罪を悔い改め魂の救済を得る物語だ。
私には"三國連太郎”が"ラスコーリニコフ”に、"左幸子”が"ソーニャー”に見えて仕方なかった。
原作を書いた"水上勉”は「罪と罰」を参考にしたのではないか?と、私は勝手に想像を膨らませた。

3人組の強盗が質屋を襲い大金を強奪するが仲間割れで2人が亡くなり1人は逃走する。
たまたま、男と遭遇した娼婦は男から貰った大金のお陰で苦境を脱することが出来て男を恩人だと思い込む。
その為、事件を捜査する刑事に男のことを訊かれても会ったことを隠し、男を庇うのだった。
男の実名を知らず所持品を肌身離さず持っていたが、ある時、ふと目にした新聞記事の成功した姿に当時の面影を見出だし、懐かしさのあまり男の自宅を訪ねるのだが…
男は盗んだ金を元手に事業を始めて社会的な地位を築き、贖罪の為か?施設に大金を寄付する篤志家になっていた。
そこに現れた過去からの亡霊に男は怯えた。
罪を暴く意図などない純真な元娼婦を何故殺めなければならなかったのか?
過去の罪を隠蔽するため、新たな罪を犯したことで、墓穴を掘ってしまう男の姿から人間の弱さや愚かさを訴えて観るものの心を揺さぶる。
推理小説を越えてドラマとしても素晴らしく、執念の刑事を演じた"高倉健”が霞むほどの"三國連太郎”と"左幸子”の熱演と"内田吐夢”監督の演出が冴える傑作だ。
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