荒野の狼

飢餓海峡の荒野の狼のレビュー・感想・評価

飢餓海峡(1965年製作の映画)
5.0
1965年公開の3時間の映画。冒頭の青函連絡船の事故は1954年の洞爺丸事故がモデルだが、本作出演の高倉健主演の1982年の映画「海峡」も冒頭はこの事故の場面から。ちなみに、1931年生まれの高倉は本作では34歳で、「海峡」では51歳だが冒頭は若々しく演じている)。本作は白黒映画で事故から10年ほどの制作なので海難シーンはドキュメンタリーのような迫力がある。
前半は青森県大湊(現在のむつ市)で左幸子対伴順三郎、後半は舞鶴(京都)で三國連太郎対高倉健の構図。左と三國は、犯罪に関与しながらも貧しい境遇を何とか生き抜こうとし、伴と高倉は警察として、犯罪者への同情や共感というものは抜きに追い詰めていく姿勢。復員帰りで貧しい三國が、老人に高価な煙草を箱ごと与える姿を見て、左は「いい人」と直感的に人間として信じることができる。一方、高倉を中心とする警察側は、犯罪者側を人として信じる姿勢がなく、それを三國に指摘されると、さすがに口をつぐんでしまう。
当時の日本の世相をよく描いた社会派ドラマと言ってよく、推理ドラマとしては、未解決なところもあるが映画の完成度には影響はない。三國と左の二人の主役は申し分なく伴、高倉、藤田進もしっかりと脇を固めている。津軽海峡、恐山、青函連絡船などの北の厳しい風景映像も、生活の厳しさを反映したものになったおりよい。
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