広島カップ

飢餓海峡の広島カップのレビュー・感想・評価

飢餓海峡(1965年製作の映画)
4.5
北海道、青森、東京、京都と舞台を転々とさせて戦後すぐの日本の様子を見せながら展開するフィルムノワール。
都会の退廃した雰囲気の中ではなく、仏ヶ浦、恐山、大湊等の青森下北半島の自然風景の中でもフィルムノワールとして見事に成立するんだという驚きがあります。
左幸子と加藤嘉の親子が浸かっていた青森の鄙びた温泉に私も行った事がありあの辺の様子はよく知っているので余計にそう感じます。

前半の北海道と青森で事件を追う伴淳三郎演じる刑事が小柄で短足に加えてシャッポと長靴といういでたちで極めて独特な味だったのが印象的。
アジャパーのアの字も当然無く、悲しく深刻な表情を浮かべた真面目な老刑事を快演でした。Wikiを見るとかなり内田吐夢にしごかれて自信を失っていてそれがかえって良かったとのこと。
また逃亡犯を演った三國連太郎の存在感も見事だった。根っからの悪ではなく戦後の貧しさ故の犯罪であったこと、戦後の日本人が一歩間違えれば落ちていったであろうダークサイドの人物を演じていてこちらも見事でした。三國自身も戦後はかなり苦労を重ねたらしい。
鼻の下に髭をたくわえた彼が薄暗い白黒の画面で横顔を撮られると、当時42才の彼はなんとなくフレディ・マーキュリーに似ておりました。余計なことですが...
広島カップ

広島カップ