八木

アウトレイジの八木のレビュー・感想・評価

アウトレイジ(2010年製作の映画)
3.4
最新作に向けて予習をした。
北野映画を何も知らない状態なので、この映画がフィルモグラフィでどういう立ち位置なのか気になるところであります。とりあえず、世界で評価されがち(それを日本が誇りがち)であることが、見ていない人間からすると多少うるせえ領域に入っていた(また世代的にビートたけしの洗礼も受けてないのよな)『北野武』ブランドは、この映画を観ることで多少理解できた気がしました。人間がアクションを起こして波打った空間から、にじむように背景と関係性が浮かび上がって、映画の中にぐっとのめり込める手法がこの作品では確立してました。手りゅう弾渡して「使い方わかるか」とだけ軽く聞くシーンとか、とてもいいです。この映画の場合、ストーリーがものすごく薄味なので、そういう演出が立っていて味わえるんですよね。そして、必要なところはセリフをきっちり盛って状況を説明。バチバチに宣伝打ってる邦画とかで、こういう「映画的であること」がまったくできてないことが多いと感じるのですが、監督の映画を見せるための手法が確かなことが、この1本見るだけでわかってとてもよかった(誰がどのタイミングで評価してんだって話でしょうが)。
そういう、映画的に魅力のいっぱいある見せ方が詰まった映画であって、見終わってなんだか中途半端な印象になったのは、わりとたくさん弱点もあると感じたからです。
前述してますけども、ストーリーが超薄味です。見終わってトータルで何が言いたいのか全然わからんかった。多分この映画って暴力描写がメインで、乱暴に書いたらファイナルデッドシリーズと同じなんだと思います。「ヤクザの組同士が揉めたらいっぱい人死んだ」という、ないのと等しいストーリーに、怨恨込めて暴力振るうシーンを盛り付けて無理やり山場にしてるような感じ。肝心の暴力描写も昨今の作品と比較するとパンチ弱いです。
主役が監督自身で、ここに感情移入しながら見るといいのかもしれないけど、超大根なんですよ。コピー通り、ほとんどの登場人物が狡猾だったり腹黒かったりするなかで、わりかしストレートな気質の主役で一番動きが読みやすいのに、表情弱いし声も弱いし、北野武が演じることで妙にミステリアスな人間になってしまってる。この映画で数少ないカッコいい人格のキャラに自分を当てはめて映画作ってるって、ちょっと自己愛きついとみてて思った。
北野映画の中で唯一この作品は続編があるということは、多分、作ってて楽しかったんでしょうね。そういう「たのしー!」ていうテンションは見てて伝わりました。僕はファイナルデッドシリーズを一本も見たことない(告白)。
八木

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