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アウトレイジのnaoズfirmのレビュー・感想・評価

アウトレイジ(2010年製作の映画)
3.5

アウトレイジシリーズ第1作目🎬

ストーリーはヤクザの世界で生き残りを賭けた男たちの壮絶な権力闘争を描いた作品でした。北野組最高です。北野武・加瀬亮・椎名桔平・國村隼・三浦友和・小日向文世・北村総一朗などそうそうたるメンツですね。こんなにもヤクザ役が似合う俳優がいるとは、顔面破壊力がエゲツなかったです。

今作は決して実際のヤクザを描いているわけではありませんし、いつにもましてチンピラ感・口だけ番長感が強くなっています。あくまで今作で描かれているのは暴力である以上に「旧態依然とした極道の価値観」から「新しいビジネス的・打算的な価値観」へのパラダイムシフトだと思いました。関内会長は子分達を上手く煽てて自分の思い通りに動くよう仕向ける「人間力」を身につけています。どんなに下っ端でも手厚くねぎらい、心にも無いような嘘の出世話を吹き込んで舎弟達の心を掌握します。また、大友組の面々は本作でもっとも美味しい役の水野をはじめとして義理と人情を重んじる昔気質の集まりです。たけし扮する大友組長も、会長に話をつけに行くときは指を詰めるような儀礼を身につけています。彼らは古い時代の象徴であり、そしてある意味では美学にも見える「極道」を身につけています。一方、三浦友和が演じる加藤は、常に部下相手に威張り散らかしており、自分が絶対的に”偉い”のだと誇示したい名誉欲に満ちています。そしてその都度関内会長に怒られています。また、大友組の異端児・石原はいわゆる「インテリヤクザ」です。小国の大使館を利用してカジノを開いたり株で資金運用をしたり、仁義とは別の自己顕示欲で動くタイプの人間です。要は自分以外の人間は馬鹿だと思っているようなスノッブなヤクザです。旧来の極道の価値観とは別のいわば新世代型のヤクザです。今作ではこの新世代型のヤクザが旧世代型のヤクザを駆逐していきます。いうなればヤクザのイデオロギー闘争・世代交代です。そして視点は、旧世代への懐古的な優しさに満ちています。時にはギャグすれすれの残酷描写も見せながら、しかし作品全体としては極めてまっとうなノスタルジーに包まれ、ストーリーを見終った後には、やはり椎名桔平が一番格好良いですし、たけしが一番愛嬌があるんです。俳優としてどうこうというより、純粋に映画全体のトーンが彼らのような仁義を重んじる人間達を真ん中に据えるからです。映画の中盤で抗争が一段落してしまい中だるみする所が少し気になりましたがとても楽しい映画でした。仁義とかの価値観って意外と日本土着ものだと思いました。
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