深獣九

アウトレイジの深獣九のレビュー・感想・評価

アウトレイジ(2010年製作の映画)
4.0
さて、GW(2019年)を利用して『アウトレイジ』『アウトレイジビヨンド』一気に観ました。実は初めての北野作品です。たぶん。
内容は「ヤク○の生態図鑑」でした。
いや、これは自分の理解力が不足しているのかもしれません。でも、感じたのは「裏社会の住人が敵や仲間を裏切り裏切られのし上がっていくその過程と様々なやり口」。興味深くはありましたが、期待していた「世界のキタノ」の深みを感じることはできませんでした。面白かったけど。

ただし、映像美は素晴らしかった。世界の北野武監督への賞賛は、この部分かもしれません。
説明すると、素晴らしいのは「間」や「余韻」。
印象に残っているのは、『アウトレイジ』で水野が惨殺されるシーン。殺害後、車を乗り捨てた池元組のヒットマンが、現場から逃走します。海沿いの直線道路を歩いて逃げるのですが、それを遠目からずっと映しているのです。物語に直接関わるような意味のあるシーンとは思えないのですが、その景色が一服の絵のようで美しいのです。

また、『アウトレイジビヨンド』からは、裏切り者の石原が制裁されるシーン。バッティングセンターで殺害されるのですが、椅子に縛り付けられピッチングマシーンの前に放置された石原に向けて、ボールが次々と飛んできます。すべてのボールが顔面にヒットし、石原の顔はみるみる青黒い痣に覆われ腫れていきます。はじめはピッチングマシーンと石原の顔のアップが交互に映るのですが、気を失ったところから画面は切り替わり、カメラはやや上方からバッティングセンターを映し出します。画面には、気を失った(死んだ)石原だけ。顔面にボールが当たる映像が、延々と流れます。周囲は暗く人気はありません。ボールが当たるたびに首をガクガクとのけぞらせる石原に、施設の照明がさながら舞台のように当たっています。これもまた、絵画のような「間」と「余韻」の美しさを感じます。

最後に、『アウトレイジビヨンド』から大友が加藤に復讐を遂げるシーン。引退した加藤が日課であるパチンコ屋に行くところです。加藤がフレームアウトしたあとも、カメラはしばらく風景を写しています。なにげないシーンでありカメラワークですが、それが転落した加藤の心情と現在の立場を表していると感じました。

キタノワール。楽しめました。趣味の写真撮影の参考にもなりました。
深獣九

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