なんか毎日ホアキン見てるな…
4K版再上映。おもしろけりゃ良いんだよ精神で主役をオリジナルキャラにしてしまったリドスコ御大の歴史巨編。話をすっかり忘れており、再発見が多かった。
・改めて、マキシマス(ラッセル・クロウ)からするとかなり理不尽な話だ。アウレリウスは優れた皇帝ってことになっているが、この人の皇位継承の根回し不足と子育て大失敗が争いの全ての原因。「最初から暴力装置に取り込まれて詰んでいたシリーズ」であり「あのジジイが全部悪いんじゃねーかシリーズ」でもあり、リドスコの系譜に連なる作品だった。
・男2人が女を巡って決闘する「最後の決闘裁判」的な視点で鑑賞した。ルッシラ(コニー・ニールセン)はマキシマスとコモドゥス(ホアキン)の間を行ったり来たりしつつ、生き延びるための最善を尽くしている。近親相姦的なくだり、あそこまでルッシラが体を張っていたとはすっかり忘れていた。コモドゥスの承認欲求や愛の渇望っぷりも細かく描かれており、最終決戦で三者の思いが交錯するように作られていた。マキシマスの英雄譚、という一面的な印象が変わった。
・カリスマ性のないコモドゥスは民衆の反応を気にしていて、マキシマスを殺せるタイミングでも躊躇ってしまう。これも記憶と違ったのが、最後の戦いが終わった時、勝利の喝采を叫ぶ民衆はおらず、コロッセオが静寂に包まれた点。殺し合いの先に何も残らないという虚無感は、リドスコの近作で特に強調されるようになっているが、今作にもその香りは確かに入っていた。今のリドスコだったらルッシラに締めの演説を打たせず、彼女も虚無に飲み込まれるアンチカタルシスな演出にしている気がする。