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アングスト/不安のペインのレビュー・感想・評価

アングスト/不安(1983年製作の映画)
4.3
“食人族”

ギャスパー・ノエ師匠のオールタイムベスト映画ということでシネフィルこぞって連日満員の本作。いてもたってもいられず鑑賞…

なんでしょう、もっと観賞後に具合悪くなるようなブッ飛んだ作品かと思いきや、凄く良い意味で所々で作り手のインテリジェンスを感じさせるような硬派な作りの殺人ドキュメントだった(音のチョイスや使い方に特に知性を感じた)。

殺人鬼を派手に超魅力的なキャラクターとして描く訳でもなく、淡々と精神分析、カウンセリングしていくような語り口。ステディカムやズームによる極端な接写ショットや、クレーンでの高所からの俯瞰ショットなどを多用した多彩なカメラワークも印象的。

題材は全然違うが、観てみたら意外と硬派な作品だった!という意味では私は『食人族』を観た時の感触を思い出しました(※ちなみに『アングスト~』同様『食人族』もギャスパー・ノエのフェイバリット作品)。

スプラッターホラーのように血がブシャーッ!みたいなのはほぼ皆無なので物足りなく感じる人もいるのかもしれないが、『ムカデ人間2』よろしく、犯人の殺し方や、死体運びの拙さなど主人公の犯行の“手際の悪さ”がかえってリアルに感じた(※しかもその行程をカットを割らずにじっくり長回しで見せる)。 

主人公の顔はちょっと目を細めるとミック・ジャガーに見えなくもないような(笑)

そんなわけでシリアルキラーの真相心理、葛藤をここまで細やかに接写した作品もなかなかないと思います。冒頭と終盤、主人公が若い女性を見て犯行を犯したくてウズウズしているのを捉えたシーンで主人公がフランクフルト(改め不安クフルト)をむさぼるように食べていて、改めて“食欲と性欲の関連性”みたいなものにも思いを巡らせました。

P.S.
所々でダックスフントの超かわいいショットを入れてくるあたり、監督はかなりオチャメな人だと推測。
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