アラサーちゃん

拳銃貸しますのアラサーちゃんのレビュー・感想・評価

拳銃貸します(1942年製作の映画)
3.3
.
〖拳銃貸します〗
.
.
古い映画だけど、映画好きな人ならだいたいは、この映画のワンシーン観たことあるはず。と言っても後世に残るほど有名なシーンの映画じゃありません。

ヒロイン役の、ヴェロニカ・レイク。
どこかで聴いたことあるような気がするとおもうんですけど、そう、警察の内部にはびこる腐敗と暴力、男たちの人間模様を描いた『L.A. コンフィデンシャル』
この現代ノワールのなかで圧倒的存在感を放つファム・ファタールとして妖艶に輝いていたキム・ベイシンガーが、劇中で心酔していた往年の美人女優こそこのヴェロニカ・レイクです。

まあそんなこたあどうでもよくて、肝心の内容はですね、フィルム・ノワールとして名高い作品ですが、そこまでフィルム・ノワールという感じは私はなかったかなっていう。ノワールといえば魅惑の悪女がつきものだけど、下衆たアダルト恋愛はそこにはなく、ヒロインのヴェロニカ・レイクも線の細い、か弱い感じに描かれていたので。
とは言いつつほの暗い映像と、事件に巻き込まれ真相に迫るストーリー展開、渦巻く陰謀、ハードボイルドな主人公のトレンチコートにソフト帽というファッションなど、ノワール要素は確かに高いかも。←ほぼじゃん
.
.
殺し屋のレイヴンは、ある依頼主の任務を終え報酬を得るが、それが盗まれてマークされていた紙幣だったため、警察から追われることになる。レイヴンは罠にはめた依頼主に復讐すべく後を追う。同じ頃、美人マジシャンのエレンは、恋人で警官のマイケルに頼まれ、怪しいクラブ経営者に接近する。ふたりはそれぞれの目的のため乗り込んだ、ロス行きの寝台列車で相席するが、奇しくもお互いの目的は同一人物であった。
.
.
主人公の殺し屋レイヴンを、アラン・ラッドが演じていますがこの時代に珍しいような正統派ハンサム♡このイケメンさと、ノワールな雰囲気も相まって、アラン・ドロンの渋い魅力が殺人級にかっこいい『サムライ』を彷彿とさせてくれます。
アラン・ラッドはよく知らないけど、フィルム・ノワールにはよく出ている俳優だそうなので、ドロンはもしかしたらこの時のラッドをモチーフに『サムライ』のコステロ像を作り上げたのかも知れません、わからないけどね。

ストーリーは特筆すべきもなく、要所要所のシーンのセンスの高さを褒める以外は正直間延びしてしまう展開。
ただ、他のノワールにはない、アンチヒーローのバックグラウンドが緻密に仕上がっていて、生い立ちや寂しさが表面に浮かび上がってくるので人間味を感じられるのは評価したいところ(だいたいのノワール主人公はニコリともしない機械人間のアウトローみたいなやつばっかだからね!好きだけど!)
猫を可愛がり、過去のトラウマの夢に悩まされる。そんな素顔を隠し、無表情で冷徹に殺し屋の任務を遂行するレイヴン。こんなの感情移入しないわけないじゃないですか、イケメンだし。←そこ

結局のヒロインとの恋愛要素も、なんだかピュアで健康的で可愛らしいじゃない。ふたりで追っ手から逃れるハラハラした一夜を共にしただけで、熱にほだされるように口付けを交わすよりも、追っ手の警官を見つめ、『あの男と結婚するつもりなのか?』(頷く)『いい男か?』(頷く)その反応にレイヴンが満足そうに微笑むやりとりがいい。そして、逃がした彼女が出ていく前に彼の頬にライトなキス。そこで嬉しそうに微笑む。相手を求めない、純粋な恋愛がそこで生まれたわけですよね。いいよね。

ということでストーリー自体にそこまで魅力は感じないが、主人公のキャラクターが良かったのと『L.A.コンフィデンシャル』や『サムライ』などの関連作品が好きなので印象良かった。