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稲妻のtackyのレビュー・感想・評価

稲妻(1952年製作の映画)
4.8
この物語は、それぞれ父の違う母子家庭の四兄弟の末娘が、家族から離れて自立しようとする物語である。

高峰秀子演ずる末娘は、無神経な長女、押しに弱く頼りない次女、働きもせず愚痴ばかりの長男など、周りにウンザリしている。
しかも、長男以外にも、出てくる男全員がロクでも無い奴らで、結婚にも幻滅している。

そしてストレスがピークになり、勝手に一人暮らしを始める。その下宿のお隣には、根上淳と香川京子の上品な仲のいい理想の兄弟がいて、自分の兄弟と対比して、明日への望みを抱くのである。

クライマックス、勝手に出て行った末娘のところに、浦辺粂子の母親が訪ねてくるシーンの、二人の泣きながらの喧嘩は凄まじく、悲しい。
それに続くラスト、遠くで稲光が起こるのを見上げた末娘は、気持ちを入れ替え、母との関係を再構築し、送って行く。明日に希望を持たせた終わり方で、とても感動した。

成瀬巳喜男は、東京の当時の下町の風情を捉えて、このドロドロした物語を、淡々と描いていて、とても後味の良い作品となった。
人間の嫌な部分も含めて、人物描写がしっかりしていて、素晴らしかった。

しかし、成瀬の作品の高峰秀子は、なんでこうも美しいのだろう。
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