もるがな

クローズZEROのもるがなのレビュー・感想・評価

クローズZERO(2007年製作の映画)
3.1
登場するヤンキーがどれも個性的でほぼ全員キャラ立ちしているのは凄い。演出もやや過剰ながらも外連味があり、漫画的表現を入れながらも逸脱しすぎないバランス感覚があったのは良かった。ただ面白かったのは前半までで、中盤からはどうにも失速した感じが否めない。

特に中盤の、主人公が数の力に押されるシーンは見ててかなり萎えてしまった。主人公の敗北は期待していたのだけど、あんな現実的に負けるとは思わず、その後、数を集めてボコった側が主人公の傘下に入ったのも全くの意味不明である。あのあたりから加速的につまらなくなっていった気がする。

終盤、仲間のチンピラヤクザが詰められるVシネっぽいシーンがあって、てっきり主人公が鈴蘭の頂上を捨ててそっちを助けに行くと期待していたのだが、それも特に関係なく話が終わってしまった……。特に見所であるクライマックスの乱闘シーンがいきなり黒木メイサのPVになったのも激萎え。とにかく萎えるばかりだった。

なんというか、よく纏まっているし、実写化作品としては成功の部類に入るのだろうが、ヤンキー映画なのに所謂ロマンとか青春とかをまるで微塵も感じなかった。この辺りはもう世代的なものになるのかもしれないが、ヤンキーにタイマン信仰めいた幻想を持っている人ほどつまらなく映るのではないだろうか。作品内でその手の幻想を守っていたのはリンダマンぐらいで、あとはハイエナにしか見えなかった。映画や漫画を見る限りでは、鈴蘭でテッペン取るための条件は派閥に入って徒党を組むのが一番の近道で、そのあたりも微妙に感じる要因なのかもしれない。

あと、半端にやるんなら、大人の世界とかは最初から入れないほうがいいと思う。これは個人的な感覚に過ぎないのだが、ヤンキー作品に大人の世界としてヤクザが絡み出すと、とたんにつまらなくなってしまう。それはアウトローのヤンキーなら肌感覚で分かるリアルさであるので、完全に否定はしないのだが、そこすらブチ破るのがロマンだろう。そういう意味では終始ノレない作品だった。
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