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レディ アサシンのnetfilmsのレビュー・感想・評価

レディ アサシン(2007年製作の映画)
3.7
 サンドラ(アーシア・アルジェント)は元娼婦で、株式市場を牛耳るマイルズ(マイケル・マドセン)とパトロンの関係を結ぶ。香港でのクラブ経営の夢を実現させるため資金が必要となった彼女は、巧みな誘惑でマイルズから金を引き出そうとするが、なかなか上手くいかない。もう1人のサンドラの愛人である中国人貿易商のレスター(カール・ン)は、裏社会でコカイン密輸と殺しの仕事を引き受けていた。サンドラはレスターに言われるがままにマイルズを殺害。レスターの口利きで香港へ逃げるが、そこで謎の組織に命を狙われることになる。前半部分はサンドラがかつて愛したマイルズをガン・ショットで殺すまでを丁寧に描く。今作もアクション映画にかこつけたアサイヤスの性癖丸出しの映画だと思って言ってもあながち間違いではない。オフィスでアーシア・アルジェントにパンツ越しにヴァギナを触らせたり、手錠につないでセックスをさせたり、およそヒロインに似つかわしくない演出ぶりには批判の声もあろう。思えば『イルマ・ヴェップ』では後に自分の奥方になったマギー・チャンに、ノー・ブラでボディ・ラインのくっきり見える黒いボディ・スーツを着せるという思いっきり自分の性癖丸出しの演出で、カルト映画という強い衝撃を残した。

 『デーモンラヴァー』では主演のコニー・ニールセンにわかのわからない監督と吐き捨てられ、何も演出してくれないし良いとも悪いとも言わないとその監督としての演出姿勢を糾弾されたが、アサイヤスは設定だけ明確にした上で、あとは俳優に任せる監督として知られている。だからこそ今作でのアーシア・アルジェントのNGのない脱ぎっぷりには
アサイヤス自身、相当満足したに違いない。かつて愛したマイルズをガン・ショットで殺すまでの描写にこれでもかと時間を割く。『デーモンラヴァー』ではほとんど失敗に終わっていたアジアン・ノワールの雰囲気も今作では十分に表現出来ている。貿易会社という場面設定、荒涼とした山に囲まれた砂地、夜の明かり。大抵、事件は朝でも昼でもなく、夜の明かりの前で実行される。石井隆、北野武、ジョン・ウー、ジョニー・トーに匹敵するアジアン・ノワールの世界をフランス人であるアサイヤスがここまで堂々と展開していることに、驚きを禁じ得ない。それと共に今作が実に痛快なのは、登場人物たちが国境を悠々と越えていくことにある。前半はフランス映画そのものと言えた今作のフォルムが香港に行った途端、まるで別の映画になったような錯覚を覚える。アサイヤスの映画では、全ての登場人物たちがまるで国境などないかのように振る舞うし、恐るべきフットワークの軽さで国から国へと移動していく。
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