朝田

札束無情の朝田のレビュー・感想・評価

札束無情(1950年製作の映画)
-
フライシャーの映画は厳格という言葉がよく似合う。全てが計算しつくされ、無駄が何一つない。もはやブレッソン並みにソリッドだ。「その女を殺せ」並みに贅肉が究極的に削ぎ落とされた傑作フィルムノワール。物語自体は所謂クライム映画の典型例。なので脚本の面白さは「その女を殺せ」の方に軍配が上がるが、それでも68分という尺で完璧に物語を語りきってしまう様はすごいとしか言い様がない。必要最低限のカット量とセリフ量で極めて簡潔に語っていくフライシャーの手さばきに痺れる。銃を持った手元のカットから、そのまま下にカメラが動き撃たれた人物の顔を捉える、といった一連のシーンに代表される無駄のない、運動神経に満ちたカメラワークには圧倒される。また、犯罪計画を行う際にはセリフが一切用いられず、人物の視線のやり取りだけでサスペンスを演出してもいてこれまた見事。
朝田

朝田