どいたま

イグジット・スルー・ザ・ギフトショップのどいたまのネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

・84/100点
・以前から観たいみたいとは思っていながら、レンタルDVD点ではなかなか取り扱いがなかった中、Netflixにてようやく鑑賞。
・噂に聞く通りの傑作でした。

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ティエリー・グエッタは、自分の日常のあらゆる場面を撮影することを趣味としている自称・映像作家。ストリートアートの世界を知り、その魅力に取り憑かれたグエッタは、アーティスト達に同行。アンダーグラウンドで様々なアーティストと交流する。ついには、世界的に知名なアーティストとして知られるバンクシーとの出会いを果たしたグエッタ。
ストリートアートの価値が美術界から注目されてきたのを好機と見たバンクシーは、グエッタが撮りためた映像を編集し、ドキュメンタリー映画とするようグエッタに依頼する。ところが、半年後に出来上がった作品は、サイケディカルな映像が2時間続く、地獄のような映像だった。
グエッタに映画製作の知識がないと知ったバンクシーは、映像製作の代わりの趣味として、ストリートアートを勧める。
これは、「アーティスト達に長年密着してきたグエッタなら、映像製作以外の趣味として、ストリートアートを楽しむことができるだろう」、というバンクシーなりの親切心だった。
しかし、この時、バンクシーには気づく余地がなかった。
その後グエッタがMBW(Mr. Brain Wash)を名乗る、世界的なアーティストへと登りつめていくということに…。
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・「アートの価値とは何なのか」、映画、絵画、音楽等を含む<アート>にまつわるこれまでの価値観を180度変えられる程の衝撃を受けました。
・素晴らしいとされるアート・芸術作品は本当に真に素晴らしいものなのか。アートに対して感銘を受けた時、本当に心の底から素晴らしいと思って素晴らしいと言っているのだろうか。それとも、そのアートが素晴らしいと大衆が言っているから素晴らしいと言うのだろうか。
・「お前の価値観でちゃんと考えろよ」と、改めて釘を刺された思いになる作品でした。

・バンクシーのアートとMBWのアート。この映画を観た人は、本物か偽物かレベルで、全くの別物であると認識するはず。
・なのに、両者のアートは共に評論家達から高い評価を受け、高値で取引されている。(2018年現在は未調査だが、少なくとも映画公開当時は)
・であれば、両者の違いは何だろう。両作者のアーティストとしての経緯は全く違うのに、その作品は同じ土俵で同じような評価を得る。
・MBWの成功は、アートの価値は作品自体の持つ価値ではなく、作品の評価によって決まる、ということを浮き彫りにしている。裏を返せば、この映画を監督したバンクシーのアートでさえ、壁の落書きと紙一重だということだ。自分たちの作品の危うさを含めて問題提起をする、そのバンクシーの誠実さには頭が上がらない。
・評価さえ得れば、壁の落書きはアートになるし、どんなに鍛錬に鍛錬を重ねた技術をつぎ込んだ作品でも、評価する人がいなければ、壁の落書きと変わりない。この教訓は、アートを消費する立場として、そして、アートを作り続ける立場として、忘れられない矜持となりました。
どいたま

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