シズヲ

ソルジャーブルーのシズヲのレビュー・感想・評価

ソルジャーブルー(1970年製作の映画)
4.4
60年代に古典的西部劇とは一線を画すマカロニ・ウエスタンが隆盛し、69年には本場の西部劇で圧倒的な暴力と破滅を描いた「ワイルドバンチ」が公開され、そして70年に古典的西部劇を徹底的にぶちのめす本作「ソルジャーブルー」が公開された。まさしくスゴい時代だ。古典的西部劇っぽい要素を部分的になぞった上で、最後に全てを覆したこの映画は実際凄い。情熱的でありながら何処か切なく、訴えかけるような主題歌も記憶に残る。

冒頭で描かれるインディアンの襲撃シーンが印象的。そこで如何にも古典的な野蛮人っぽく描写されているからこそ、旅の過程でインディアンの実態が語られる流れが効果的に映ってくる。そうして彼らこそが被害者であることが明白になった矢先に虐殺が遂行され、白人の野蛮さを徹底的に炙り出す構成が凄まじい。こういう「オチで一気に落とす」やり方はシンプルだし、些か単純な逆転構図の描写ではあるけど、単純だからこそ「アメリカの白人神話の破壊」という強烈な毒が際立っている(むしろインディアン擁護よりそういった“アメリカ合衆国への不信感”そのものが主題っぽく見える)。

序盤~中盤の道中旅をユーモラスに描いているのも面白い。緩い流れが続いて、時にロマンチックなムードになって、同時に不思議な寂寥感が滲み出ていて……そんな旅の場面も見ていて楽しいのがニクい。それさえも終盤の残虐なシーンに至るまでの壮大な引きだったのが何よりも惨い。メッセージ性が露骨すぎて些かあざとさすら感じるヒロインの主義主張さえも、終盤を引き立てるためのスパイスに過ぎない。虐殺も衝撃的だけど、一番ゾッとするのはエンドロールだ。寒気がするような死の臭いで充満していて、まさにこの映画が物語るテーマを端的に表している。
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